第1部 甦る英雄の影
第1章 人狼部隊
轟く者
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しかし彼女は涼しい顔で兵舎にされた民家やテントから出てきた帝国軍の歩兵を肉塊へと変えていく。
「前進する。重装歩兵のマガジンを回収しておいてくれ」
エースも新兵も見境なく次々に退けるアンリの背後からガイウスとギュスパーはランカーを撃つ。ノーデス姉弟の操るカサブランカは民家の壁を突き抜け、キャンプを踏み潰し兵舎を破壊する。
しかし抵抗は衰えず、激しい砲火こそないものの、帝国の兵士に戦う意思を失う者はいない。
・ ・ ・ ・
「ガッ、ガリア軍のォッ!?」
基地内を見回っていた歩哨の首に大きな裂け目が入り、生暖かい血が吹き零れる。崩れ落ちた兵士の背後に立つのはナイフを持ったアンドレ・フィリッポスだ。ハンドサインに呼応してマルギットやフィオネたちがテントの影から出てくる。
アンリ隊が守備隊の視線を集めている間にマルギット分隊が新兵器を奪取、そのまま残存する敵を撃退してファウゼンへ向かう計画だ。
「隊長が時間を稼いでいる間に車庫へ向かいます! ロッシュ、先導を頼みます」
「了解だぜ姉さん。みんな、こっちだ」
兵舎と兵舎の間を縫うように進み、敵はナイフかワイヤーで仕留める。潜入中に敵兵と出会した際の対処術をマルギットから徹底的に叩き込まれた『ヴェアヴォルフ』の隊員たちは、見つけ次第始末していく。車庫の付近はもぬけの空で、見張りすらいない。素早く、静密に目標地点に到達したマルギット分隊は中へ突入する。
中は機関砲や榴弾砲を備えた装甲列車、運搬用の有蓋車や客車に加えて、車両の前部が鋭い曲線になった牽引用のディーゼルまである。あまりに普通の車庫で、一同は首をかしげる。台車や客車はかなり並んでいるが、それでもこの要塞じみた車庫が必要かと問われれば、どう考えても必要性の欠片もないことは明白だからだ。
「……このディーゼルは確かに形状こそ空気抵抗の少ないものよ。でもこれ、帝国は五年前に大陸横断鉄道で実用化してるはずじゃなかった?」
「はい。確かエーゼル牽引用の物を改良したモデルだったはずです。侵攻軍司令官の皇女が推進し計画です」
「待て待て。そんな物のために村を潰してこれだけの兵力を集め、秘密に作ったのか? いくらなんでもそいつは馬鹿げた話だろ。ジョークにもならないぜ」
何かないのかと一同は車庫の中を捜索する。8人でくまなく見たが何も見つからない。車庫が特別なこともなく、目新しい兵器どころか、この中には列車しかない。秘密工廠という情報は諜報部が掴んだガセネタで、クレーンなどは物資を搬入するための物なのだと皆が思い始めていた。他に兵器を開発する能力を持っている施設は他に見られない以上、ガセが最有力になる。
「ったく、諜報部もちゃんと調べてから報告しろっての。迷惑するのは俺たちな
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