第1部 甦る英雄の影
第1章 人狼部隊
轟く者
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ンリは時間を考えて、各車両に停止を指示した。
日は既に西へと沈み始め、赤い日差しが純白のカサブランカを真紅に染める。あとしばらくすれば森は真っ暗になるだろう。総出でキャンプを用意し、アンリは指示を出す。
「まず2人3組で偵察に出てくれ。後の7人はキャンプの警備、歩哨は名前の五十音順でローテーションを組む。それでは行動開始だ」
・ ・ ・ ・
土地勘のあるガイウスやヒルデが偵察に行き、隊長のアンリや戦車兵のノーデス姉弟はキャンプに残った。驚くべきことに、マルギットも警備組であった。
「姉さんは方向音痴なんだよ。知らない場所では必ず迷うんだぜ?」
「……返す言葉もありません」
警備組は一通り周囲を確認すると、少し警戒を緩める。付近で誰かが歩いた跡がないため、帝国は見回りをしていない可能性があるからだ。実際、ガリアの森は慣れない者が不用意に立ち入ると迷う危険がある。帝国もそこまでして警備に人手を割きたくないのだ。
「昔からよく道に迷うんです。何ででしょうか?」
「地図見ねぇからだよ」
「難しいじゃないですか、あれ」
戦車にこもったノーデス姉弟は弾薬のチェック、生真面目なエルンストは鳴子を用意し、フィオネは装甲車の整備をしている。ネームレスには犯罪者が多かったが、このヴェアヴォルフはほぼ犯罪者しかいないらしい。まともな訓練もなくこれだけの技量を有しているのだ、まず正規の方法ではないだろう。
「おーい、敵は工廠に籠ってやがる。戦車と重装歩兵のオンパレードだ」
「工廠の中に馬鹿デカイ車庫がある。何か妙だぜ」
工廠の様子を見に行ったガイウスとロッシュが帰投する。秘密工廠は籠城し重火力で固めている。アンリは頭の地図に情報を書き足していく。
「車庫はどのくらいの大きさだ」
「飛行船より大きいぜ。おまけに線路が2本延びてた」
「内側に向かってクレーンが腐るほどついてるんだ。ありゃ輸送するために鉄道を使うつもりじゃないのか?」
「占領下なら鉄道輸送は使えるが、複線? 大きいなら自走臼砲のように分解して現地で組み立てればいいはずだ」
「確かにそれはそうだな……今までにない兵器かもしれないぞ」
アンリは未知の兵器の可能性をあると感じて一度推測を止めた。他の偵察隊が帰投して情報を仕入れてから整理することにした。
・ ・ ・ ・
日が沈み、森は闇に包まれた。夜はラグナイトランプで視界を確保し、レーションを頬張る。アンリは女っ気こそないものの味覚には拘りが強く、軍で支給されるレーションが大嫌いだった。風味がなく、肉なら肉、魚なら魚と塩コショウの味しかしないのは苦痛だ。薄味のポークソテーを食べ終えたアンリは難しい顔だ。
「工廠
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