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東方小噺
天の少女の厄払い
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っていただろう。
 そう返し、去ろうとする彼女に少女は駆けた。

 剣をかぶり、宙を舞い、一息に彼女に、厄を纏う神に斬りかかった。
 そしてその剣は神を切り裂く寸前で止まった。
 彼女の目の前、面を上げた少女の瞳。そこには悲しみでなく、憤りでなく、確かな意志を湛えていた。
 かつてのように不敵に。
 空虚さ故の深淵でなく、確固たる思いの深い色を宿していた。

 厄が移る。
 そう思い後ずさろうとした彼女はふと、厄が動かぬことに気づいた。動かないどころではなく斬られている。
 目の前にある剣が、少女が、ほのかに輝いていた。
 驚く彼女に少女は得意げに告げる。
 これは天の宝、天人にしか扱えぬ緋想の剣。万物に宿る気たる気質を集め天の気と顕現させ切り裂く刃。必ずや相手の弱点を付ける。思った通り厄とやらも例外でないらしいな。
 
 厄という存在はどうにも為らぬと思っていた。
 だから彼女は、その言葉が、起きた事が信じられなかった。
 確かに厄は切り裂かれた。量が減るわけでもなく、厄が払われたわけでもない。ただ切られ退けられただけ。
 だがそれでも、これだけ近くに来られたのに、手の届く場所にいるのに、厄が移らぬことが、不幸を移さないでいられることが彼女には嬉しかった。
 
 鍵山雛よ、無理だと言っていたな。だがこうして今、変えられると見せた。見せて見せた。ならばこそ、私の事も変えられぬと決まったわけではない。
 悲しいこともあったが、地上の者とも知り合えた。変わらず私に接する目付け役もいる。寧ろ気楽になったほどだ。好きに動いていいと、なったのだ。

 まだ悲しみがあるのだろう。振り払えてきれていないのだろう。
 だがそれでも、その少女の言葉には誤魔化しではない確かな力があった。
 ただ不幸なのだと決めつけず諦めない少女の瞳が彼女を見つめていた。

 ふと、彼女は少女の頭を撫でたいと思った。
 彼女が少女に悲しさを覚えたのは同じだと思ったからだ。変えられぬ定めに嘆き、誰からも必要とされない。
 一人である事を知らずの内に形作られたその姿が自分に重なったからだ。
 だが、それは杞憂だった。そして変えられぬと決めていた彼女の思いもまた、今少女に切り裂かれた。
 自らの力を、意思を自慢するように憎たらしげに見る少女の頭を、よくやったと撫でてやりたかった。
 気づけば彼女は布を取り、少女の頭を拭いていた。
 その手で、少女に触れていた。


 天の気。天気。
 しとしとと降っていた雨はいつしかぱらぱらと、その勢いを弱めていた。
 そんな空を眺めながら、自らの頭を撫で水気を取る手を不思議そうに見る少女を見ながら、彼女はふと思った。
 少女を取り巻く気質の光。それは極光と呼ばれる太陽からの光が起こす発光現
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