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東方小噺
天の少女の厄払い
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が映るから。そう答え三歩目を出した。
 下がりながら彼女は言う。
 自分は厄を纏い溜め込む厄神だと。
 近づくものは例外なく不幸に見舞われるのだと。

 何のその程度。もはや小走り程度の早さで歩き始めた少女は鼻で笑う。多少の不幸などモノにせぬ。
 それは違う、あなたでも無理だ。
 器用に後ろ走りを続ける彼女は否定する。
 馬鹿にするのかと怒りを浮かべる少女に彼女は説くのだ。
 不幸とは絶対量ではない。その人その人に合わせた偏りなのだと。

 例えば十円を無くしたとする。
 その日その日で食うに困る貧乏にならば大層な不幸だが、大金持ちならば鼻にもかけぬ。それは不幸とは呼ばぬ。
 不幸とは人に合った尺度がある。天秤が大きければそれだけ傾かせるのには力がいる。
 その傾きこそが不幸の度合い。自分が身に纏う厄は人に確かな不幸を、運の偏りを生む。
 その人の能力が高く優秀であればあるほど、その不幸は大きくなる。
 
 決してあなたを侮っているわけではないのだ。それだけの自信を持つのだ、確かに力は、才はあるのだろう。
 ならばその身に落ちる不幸もそれだけ陰湿で侮り難いものだ。
 人は皆、不幸を嫌う。取り返しのつかなくなってからでは遅い。
 だからどうか、近寄らないで欲しい。

 後ろ向きで躊躇わぬ全力疾走という、どこに目がついているの不思議な走りをする彼女に、これまた躊躇わぬ全力疾走で木の根を飛び越えた少女が笑う。
 何だ、その程度か。ならば来い。この現状を壊すなら、この終わらぬ空虚な暇を潰してくれるのならば願ったもの。変わらぬ日々ほど不幸なものはない。
 何かをなし得るにはいつか壁にぶつかるものだ。そしてその壁はぶつかった数だけ、ぶつかろうとする者の能力だけ頑固で高いもの。その苦労さえも楽しんでこそであろう

。安楽に身を委ね続けた先にあるのは終わらぬ停滞。死に似た無限の生。永遠の死など御免だ。

 若い、なんと若い。失うを知らない若さ故の蛮勇。
 失おうと取り返しのつく、無限に近い生を持つもの者の言葉。
 何度となくその力で乗り越えてきた、乗り越えることが出来た壁のみを乗り越えてきた者から出る言葉。

 後ろに迫った木の枝を背面跳びをしながら避け、彼女は思った。
 ならば少し、不幸を知ってもらおうと。
 離れているとはいえ自分と近く、そしてこれだけ話したのだ。多少の厄は移った。

 ターザンの如く蔓に捕まって宙を舞う少女に対し、彼女は回転しながら木の幹を蹴って三角飛びをする。 
 それを追おうと大きく木を蹴って勢いを付けようとした少女の握る蔓が切れる。これもまた一種の厄だ。
 少女が勢いよく近くの大石へ真正面から叩きつけられる。
 逃げていく彼女の背に、最後に少女の声が届いた。お決まりのご
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