天の少女の厄払い
[2/9]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
黙って微笑を返す。
他と触れ合えぬそこに感じ取る差異はない。
万人が彼女の救う対象であり、彼女を厭う存在だ。
優しい孤独の神。それが彼女だ。
そんな彼女は最近、ある人間を見た。
桃のついた帽子を被った、蒼い髪が綺麗な少女だ。
どこかつまらなそうな顔で歩く少女は真っ直ぐに彼女の元に向かっていた。
鍵山雛がいるのは妖怪の山。更に踏み入った場所には天狗もいる。縄張り意識の強い彼らは無許可で立ち入るものには手荒い歓迎をする。
少女はそのままでは彼らの所に行くだろう。それは分かりきった未来で、少女にとっての不幸。
だから彼女はふわりと空に飛び上がって少女の前に出た。訝しげな顔をする少女にここから先は天狗の住処だと。山の上には力の強い神もいる。引き返せと。
それがどうしたとばかりに少女は鼻で笑った。子供だから理解できなかったのだろう。
巫女や魔法使いでもあるまいし弱いただの人間では危険が多すぎる。
再度彼女は言った。
帰ってきたのは不機嫌そうで、どこか鼻にかけた自慢げな声。人間ではなく私は天人だ。そう、少女は告げた。
天人とはその名の通り天に住む人のことだ。主に修行を積んだ人間、その中でも一部の者がなれるもの。
人よりも遥かに力も強く体は頑強。寿命も比べ物になるものではない。
帽子についている桃も恐らく天界のものなのだろう。桃源郷、その名に刻まれるほど桃という存在は神聖な面を持つ。
中国では仙人の食べ物として喰らえば不老になる妙薬として。日本でも同様にこの世のものではない、あの世の食物として挙げられることがある。
死の境とされた河の水面を渡る桃を食べ老夫婦が若返る話などは有名だろう。
最も、近頃では桃から子が生まれる話に改稿されたと聞くが。
少女の言葉にその姿を見直せばなるほどと彼女は唸った。
風に揺れる長い髪は天に広がる空の如き深く優しい燃えるような蒼。
瞳は夕焼けの如き淡い朱。
服は静かにた揺らう雲の純白、裾には空にかかる虹の7色の装飾だ。
これほど天を表す服も珍しいだろう。少女によく似合っている。
最も、その傲慢な態度は天人の常なのか。初めて天人にあった彼女には判断ができなかった。
だが天人であろうと危険なものは危険。早く帰れと告げる彼女に少女は不思議そうな顔で一歩近づいた。
そして呟くのだ。
何故気質が見えるのかと。緋想の剣は持っていないはず。
気質。聞かぬその言葉を繰り返した彼女にそうだと少女は返し、さらに一歩。どうやら少女の興味は完全に移ったようだ。
三歩目を出した少女に対し彼女は後ろへ一歩。四歩目には二歩目を。
何故下がる、いや、逃げるのか。
五歩目を出しながらそう聞く少女に彼女は厄
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ