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ファルスタッフ
第一幕その八
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第一幕その八

「見つかったら何かとややこしいことになるわ」
「そうだね、それじゃあ」
「ええ」
 姿を庭の茂みの中に隠す。出て来たのはアリーチェ達だった。
「それで奥様」
「どうするかですわ」
「そうね」
 アリーチェはメグとクイックリーの言葉に頷く。
「どうしましょうか」
「報いを与えてやるべきです」
「これは絶対です」
 二人は断言する。
「問題はそれをどうするかですが」
「手紙を書いてみようかしら」
 アリーチェはふと呟いた。
「それだとどうかしら」
「手紙を?」
「それなら」
「あら、ナンネッタ」
 何気なく話に入る。
「いたの」
「いたわよ、お母様」
 にこりと笑ってそれは誤魔化す。
「それでね。そのお手紙を」
「ええ」
「誰かに持って行かせるのよ」
「あっ、それはいいわね」
「そうね」
 女達も彼女の言葉に頷く。
「けれど私達が行くと」
「あれだし」
 言い寄られているアリーチェとメグはそれはできない。だから困った顔を見せる。
「ナンネッタだとかえって言い寄られるわね」
「どうすれば」
「では私が」
 ここでクイックリーが名乗り出た。
「貴女が?」
「当事者じゃないからいけますわ」
 にこりと笑って言うのだった。
「ですから是非共」
「では御願いできるかしら」
「はい」
 アリーチェに対してその笑顔で頷く。これで決まりだった。
「ではまずはおびき出してからかって」
「それからは?」
「酷い目に逢わせてやるわ」
 娘に答える。
「絶対にね」
「容赦なく」
「勿論ですわ」
 メグにも答える。
「あんな不誠実な男には目にもの見せてやらないと」
「いけませんわね」
「そういうことですわ。あの恥知らずな雄牛」
 アリーチェはファルスタッフをこう呼んだ。
「好色な脂肪の塊」
「大酒飲みの食いしん坊」
 これはメグの言葉だ。
「しかも反省もしないで次から次に悪事を働く」
「ここで懲らしめてやらないと」
「河に投げ込んであげましょう」
 クイックリーとナンネッタも笑いながら話す。
「それか火炙りか」
「雄牛の丸焼きね」
「猪かも」
 とかく色々言われるファルスタッフだった。自業自得だが」
「じゃあクイックリーさん」
「わかっていますわ」
 クイックリーは笑顔でメグに応える。
「お任せあれ」
「そういうことで」
 また女房達は姿を消しナンネッタだけになった。するとフェントンはそっと茂みから姿を現わす。そうしてナンネッタにまた近付くのだった。
「忙しい日だね」
「お祭りの前が一番忙しいのよ」
 ナンネッタはにこりと笑ってそのフェントンに語る。
「だから驚くことはないわ」
「そうなの」
「そうよ。それでね」
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