裏通りの鍛冶師
とあるβテスター、お願いする
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なっちまう」
そんな彼が───臆病なことを自覚している彼が、多くのプレイヤーのように『はじまりの街』に留まるということをせず、ソロを貫き通してまで攻略を続けてきたのは。
それは一重に、現実世界で待っている妹さんのためだと言う。
一刻も早く、大切な人のところへ戻るために。
一人で立ち止まることよりも、一人でも前に進むことを選んだ。
「……だけどな。俺の腕じゃソロは限界が見えてたし、だからといって、鍛冶師として大っぴらに人前に出る勇気もねぇ。パーティを組もうにも、名前がバレちまう。それで馬鹿にされんのも、気持ち悪い奴って指差されんのも嫌だった。……他人が、怖かったんだよ」
「………」
「だから、なんつーか……初めてだったんだよ、誰かとパーティ組んだの。名前も、まぁ、りっちゃんとか呼ばれんのはイラッとするけど……オマエらは、笑わなかったしな。あのクラインとかいう奴にも、別に馬鹿にされたりはしなかったしよ。俺が思ってたほど、誰も気にしちゃいなかったみたいだ」
「リリア……」
「……まぁ、そんなわけだからよ。感謝してんだぜ、これでも。こんな俺でも、ちったぁ誰かと関わってみようって気になれたしな」
そう言って、リリアは照れ隠しをするように、がしがしと頭を掻いた。
きっと、彼も僕と同じだったんだろう。
人から敵意や悪意を向けられることが、人に嫌われることが───怖かった。
だからこそ、一人であり続けた。
ソロに限界を感じながらも、パーティを組むこともせず、大っぴらに店を構えることもしなかった。
誰もが自分を嫌うと決め付けて、最初から関わりを絶つことを選んだ。
嫌われることを恐れ、他人を遠ざけていた───僕と、同じだ。
だけど、それじゃあだめなんだ。
確かに僕たちに向けられる眼差しは、好意的なものだけとは限らない。
気持ち悪い、関わりたくない、いなくなってしまえ───そうした敵意や悪意の籠った視線を向けられることも、少なからずあるはずだ。
───だけど、だからといって。
最初から他人と関わることを避けていたら、誰とも関わることができなくなってしまう。
本当の意味で───孤独に、なってしまう。
それを、僕は彼女から───シェイリから、教えられた。
「……ね、リリア。僕、君に黙ってたことがあるんだけど」
「あ?」
もしかしたら、嫌われてしまうかもしれない。
おまえなんかと関わらなければよかったと、言われてしまうかもしれない。
僕は、そうなってしまうことが───自分が傷付くことが、怖かったんだ。
「実は僕、みんなから《投刃》って呼ばれてるんだ」
「……は?いや、何言ってんのオマエ」
けれど。
それを恐れているばかりでは、僕は前に進むことはできなくなってしまうのだろう。
考えてみれば当たり前のことだ。
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