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とあるβテスター、奮闘する
裏通りの鍛冶師
とあるβテスター、お願いする
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人の心を読む術を身に付けたんだろうか。
リリアのくせになまいきだ。

「オマエ……俺を何だと思ってんだよ。こっちは至ってマジメな話をしてるつもりなんだがな」
「……と、いうと?」
……と、それはさて置いて。
彼がドMというわけでもないとするなら、僕は一体何に対して感謝されたんだろう。
こういうのもなんだけど、まるで心当たりがないわけで。
身に覚えのないことに感謝されても、逆に気になってもやもやしてしまうというか、なんというか。

「……なんつうかよ。俺が人目を避けてきたって話はしただろ」
「あー、うん」
「でもって、今までソロでやってきたわけだが……それも最近、限界を感じたわけだ」
「言ってたね。それで鍛冶師になったんでしょ?」
「ああ。結構大変だったんだぜ、実用できるまで鍛冶スキル上げんのはよ」
そんな僕の心情を察したかのように、リリアはぽつりぽりつと語りだした。
ソロに限界を感じ、鍛冶師に転向。それは、出発する前に聞いていた話だ。
リリアがこの裏通りに露店を構えるのは、午後12時から15時までの間だけ。
それ以外の時間は全て、鍛冶スキルの向上とレベル上げに費やしていたらしい。
鍛冶職人と、ソロ攻略の両立。
口で言うだけなら簡単だけど、攻略組クラスのレベル維持に加え、前線で実用可能な武器を作れる程の鍛冶スキルともなれば───それは、並大抵の努力で出来ることではないだろう。

「つっても、まぁ……なんだ。せっかく鍛冶スキルを上げていい武器を作れるようになっても、結局、俺にはこの名前で人前に出られるような度胸はなかった」
「いや、でも、それは」
「別にいいっつの。自分が臆病なことぐらいわかってる」
何か言おうとして言葉に詰まる僕を、他でもないリリア本人が遮った。

───臆病。
確かに彼の性格は、決して勇敢とは言えない───というか、ぶっちゃけてしまえばヘタレだ。
安全マージンを十分に取っているにも関わらず、敵と戦う時は必要以上に怯えているような、およそ攻略に向いているとは思えない性格。
彼が鍛冶師に転向したのは、そんな自分の性格を自覚しているからなのだろう。
そんな性格の彼が、不運だったとはいえ、女性名を背負ったまま生きていかなければならなくなったとなれば───アバターネームは名乗らなければわからないとはいえ、万が一にでも他人にばれてしまう可能性を考慮して、自然と人目を避けるようになってしまったのも頷ける。
もし、これが逆の立場だったら。
きっと僕も、彼と同じ行動を取っていたはずだ。

「だからって、俺は諦めたわけじゃねぇ。絶対このゲームを終わらせて、妹にもう一度会うって決めてんだ。流石に今は、親戚の爺さん婆さんが面倒見てくれてるだろうが……俺がいつまでもここにいたら、アイツはずっと一人に
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