第4局
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った。あかりとアキラ、二人の対局は静かに始まった。
中盤まで進行し、盤面はまだ穏やかだった。二度ほどアキラが仕掛けてきたが、あかりは我慢してじっくりと打っていた。
−相手は上手、仕掛けに乗っちゃだめ。じっくり力を蓄えてからじゃないと戦えない。
盤面に向かうあかりは落ち着いていた。上手相手に打つのはいつもと同じ、慣れていた。また、盤面に集中すれば周囲のことが見えなくなるところなどは、ヒカルにそっくりだった。
対するアキラは若干の焦りがあった。盤面若干リードしているものの差はわずか。なかなか相手が隙を見せない。
−やはりこの子は強い。リードがなかなか広がらない…。でも、負ける相手じゃない。
終盤の大寄せであかりにミスが出た。本来先手が取れるところ、後手を引いてしまう。周囲の客たちは気づかなかったが、そこで勝負はついた。アキラの手を見て、あかりは自分のミスに気づいた。悔しくて手が止まってしまうあかりだった。
そんなあかりの頭に手を置いて、ヒカルが声をかけた。
「せっかくここまで打ったんだ。今日は最後まで打たせてもらえ。いいよな、塔矢。」
「…ああ、もちろん、かまわないよ。」
その後は問題なく終局まで進み、盤面で十目、コミを入れて十五目半の差でアキラの勝ちとなった。
「「ありがとうございました」」
「いや、たいしたもんだ。」「アキラくん相手にあそこまで打てるなんて。」
−あかり、お疲れ様。いい碁でしたよ。あなたの力は間違いなく塔矢アキラに伝わりましたよ。
「負けちゃった。」
あかりのつぶやきを聞いたヒカルは、あかりの頭をくしゃっとかき回すと、アキラに声をかけた。
「よし、弟子の敵討ちをしないとな。検討はいいよな、塔矢、勝負だ。」
「…望むところだ。返り討ちにするよ。」
普段の穏やかなアキラとは思えない発言に、驚く周囲の客達。周りのざわめきををよそに、席を替わり、対局の準備を進めるヒカル。
「あの子が弟子だって?」「いや、間違いなく高段だろ、あの女の子。」「はったりでアキラくん怒ったのかな?」
隣の席から、碁笥をひとつ取り、中身を確認すると手元の黒石と交換した。
「進藤、何をしている?」
「普通に打つだけじゃつまんないだろ、勝負なんだ。一色碁でやろう。」
これがヒカルたちが考えた作戦だった。今はまだヒカルの実力をアキラ以外にはあまり見せたくなかった。まだしばらくは表に出るつもりはなかったのだ。ただアキラだけがヒカルの実力を知ってくれればいい。そのための一色碁だ。同じ色の石だけで打ち、頭の中だけで把握する、プロでも難しい碁だ。当然、周りの客では碁の内容まで把握できるわけがなかった。
「塔矢が黒でいいや。塔矢、その白石、黒石な。コミは五目半。」
「え、一色碁?」「そんな、白石だけで打つっ
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