第1部 沐雨篇
第1章 士官学校
007 鍵は情報
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用し、そして戦場の覇者となった。
だから、フロルはアッシュビーのことを原作で知り得た時も、まったく失望を感じなかった。むしろ、その情報を扱う手腕に対して、賞賛の思いを抱いたのだ。
それは今も変わらない。
情報の重要性。
それをもっとも強く知っていることが、フロル・リシャールという軍人の特徴であったろう。そして転生者として誰も持ち得ない情報を持つ者として、縋り付きたい神の名前だったのだ。
彼が、彼だけが持ちうる強み。
原作の知識という名の、情報。
だからこそ、彼は彼の神を信じ続けた。
それに裏切られるまで。
「国防委員会の組織とは言え、情報部は他部署のように名ばかりの形骸化した組織ではない。少なくとも、私が戦略作戦局の局長になってからはな。君が楽をしたいと思っているならば、オススメしない。戦場での華やかな活躍を期待しているならば、それもオススメはできない」
「理解しております」
グリーンヒルは言葉を重ねた。シトレはそれを見て、小さな笑いが零れるのを抑えきれなかった。
??大した度胸だ。
「君は人を殺せるかね、自分の手で」
フロルはグリーンヒルの言葉を聞いて、もう一度頬に笑みを浮かべた。それは震えるのを抑えつけるような笑みだったろう、とフロルは彼の日記に書いている。
「殺すなら、自分の手で殺さなければならないでしょう」
だがグリーンヒルには、犬歯を剥き出しにしたその笑みが、まるで狼の笑みのように見えたという。
***
フロル・リシャールが卒業を迎える。
フロルはヤンやラップより一つ、アッテンボローより3つ年上である。当然、フロルはヤンやアッテンボローよりも先に士官学校を去ることになる。キャゼルヌも、原作通りであればあと数年は士官学校の事務局次長を続けるはずであった。
フロルの四年間、特にヤン達と過ごした期間というのは、短くもフロルにとっては貴重な時間であった。そしてそれは、どうやらヤン達にとっても同じであったようである。彼らにとっては士官学校に入ってから、ずっと面倒を見てくれた先輩がいなくなるわけで、まるで非現実的なものにしかなり得なかった。
それだけフロルが彼らに影響を与えていたとも言えるだろう。善きにしろ悪しきにしろ。
また一緒にいることも多かったキャゼルヌにしてみせれば、「ヤンやアッテンボローはフロルというガキ大将に引っかき回された被害者たち」であって、「第二・第三のフロルになり得る逸材」とのことだった。
自由惑星同盟士官学校を卒業した者は、みな等しく少尉として任官される。つまり卒業したてでいきなり下級将校となるわけだが、すぐに現場に行っても役に立つわけもない。定期的にいろいろな部署をたらい回しされるはずで、最終的に
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