崑崙の章
第12話 「……案内してもらおうか」
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……………」
「ふぁふぁふぁふぁふぁふぁははははははははハハハハハハハハ!」
太った男から発せられる声が、段々と若く張りのある男の声へと変換されていく。
完全に声質が変わると同時に、目の前の男はくたっとテーブルへと倒れこんだ。
『ハハハハハ! すばらしい! 実に素晴らしいですよ、北郷盾二君!』
若々しい男の声が、部屋中に響きわたる。
と同時に、盾二はテーブルの横に気配の揺らぎを感じて、手の中のサイコバーストを掲げて照準を定めた。
だが、その声がそれに『待った』をかける。
『おっと……勘違いしないでくださいよ。私は敵として貴方の前に姿を出すのではないのですから。出来ればその物騒なモノはしまってください』
飄々とした男の声が、若干上擦るように盾二には聞こえた。
盾二は、気配の揺らぎを見据えたまましばらく逡巡する。
だが、このままでは姿を現さないであろうという考えに至り、小さく舌打ちをすると無言のままサイコエネルギーを霧散させた。
その様子に声の主が、ようやく安堵の溜息を漏らす。
『やれやれ……危うく焼き殺されるところでした。いくら私でも、別の外史のテクノロジーである純サイコエネルギーなんて喰らったどうなるかわかりませんからね……』
「!? お前……」
盾二が驚くと同時に、気配の揺らぎは実体となってその場に姿を現した。
その姿は、若い青年のそれであり、青い髪をさらっと流した涼しげな顔。
そしてその顔には、知的な雰囲気をかもし出す眼鏡が掛けられていた。
「お久しぶり……は、違いますね。初めましてでしょうか。”貴方”には」
「…………もう一度聞く。何者だ」
盾二の険しい目に、くすりと笑いながらも、静かに頭を垂れる青年。
その姿に警戒を解くどころか、逆にいつでも行動を起こせる様に用心する盾二。
それほどに、この青年は盾二にとって異質だった。
「私の名前は于吉……管理者の一人ですよ」
于吉と名乗る青年は、その穏やかな顔に似合わぬ冷徹な目で、盾二を見据える。
その冷たくもねっとりした視線を受け、盾二は思わぬ展開になったことを居もしない神に呪うのだった。
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