崑崙の章
第12話 「……案内してもらおうか」
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歴史に逸脱した商品を扱う街……恐らくはろくでもない裏事情が出てくるに違いないのだ。
そしてそれは、おそらく桔梗に深く関係している可能性がある。
(……やっぱり俺って、お節介かもしれないな)
頼まれてもいないのに首を突っ込みたがる体質……一刀といい、俺といい、ホントいい性格していると自分でも思ってしまう。
まあ、ジャック先輩に言わせれば、スプリガンは俺達や大槻、そして御神苗先輩共々そういう性格の寄せ集めだということなのだが。
……自分だけ常識人とか言うジャック先輩だって、よく人の厄介ごとに首突っ込んで来るんだがな。
と、もう遭うこともないだろう先輩の顔を思い浮かべて苦笑する。
その時、俺は油断していたのかもしれない。
不意に背後に人に立たれる気配を感じたことに、ギクリと身を竦ませた。
(しまった!)
普段ならありえない失態だ。
油断していないつもりではあったが、一瞬の気の緩みだった。
俺は思わずナイフに手をやろうとして、自分の腰にオリハルコンナイフがないことを思い出す。
ここは街の中なのだ。
下手に武装すると周囲に不審を招くと思い、今はAMスーツのみの状態だった。
内心で悔やみつつも、平静を繕いながら溜息をついた。
「……何か用かな? いきなり後ろに立たれると、正直気分悪いんだが?」
「北郷、盾二様、でございますね?」
俺の言葉に無機質な声が囁く様に紡がれる。
俺の名前を知っている……?
「そうだけど、あんたは?」
「私どもは、貴方がお探しの方から貴方をご招待するよう命を受けたものです」
その言葉は目の前にいる商人風の男から発せられた。
……こいつもか。
どうやら相当の使い手に囲まれたらしい。
わたくし、ども、ね……俺の周囲の何人がそいつらのなのか。
目だけで左右を見ると、人の流れを遮らない程度に俺の左右にも立ち止まる男が立っている。
周囲の屋台を物色している風体だが……その目だけが、こちらを捕らえて離さない。
(相当な達人だな……一対一ならともかく、四人相手じゃどうなるかわからん)
恐らくは暗殺専門……単純な力はともかく、四人がかりでこられたら勝てるかどうか。
AMスーツがあるとしても、周囲の人を人質にとられたり、毒などで無差別な攻撃をされたらとんでもないことになる。
「招待、ねえ……ずいぶんと不躾だけど。ちゃんとお茶ぐらい出るのかな?」
「なんならお食事でも……ご一緒していただけますか?」
否定しても連れて行く癖に……とは思うが、まあしょうがないな。
虎穴にいらずんば……ってやつだ。
「……案内してもらおうか」
―― other side ―
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