崑崙の章
第12話 「……案内してもらおうか」
[5/9]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
受けられる。
かと思えば、大陸北部の特産である麦や東の海辺の乾物なども置いてある。
乾物……この時代にもあったのか?
(気にしちゃだめだな……)
なにしろ『じゃがいも』すらあるのだからな。
一昨日は探さなかったが、探せばトウモロコシもあるかもしれない。
あれも新大陸原産だ。
(……そう考えれば、この市場は確かに妙だな)
確かに一刀が創った世界だ。
そういった史実崩壊というか、こと食べ物における歴史解釈はまったく通用しないようになっている。
だが……考えてみれば、北平や宛では流通していなかったことが謎だ。
通常、これだけの市場だ。
たとえ洛陽にその存在が隠されているとしても、商人間における流通のラインに、まったくそうした品物が流れていないことは、ある意味おかしい。
商人であれば、儲けを得るために新商品を流布して広めないことには儲けが出ないからだ。
であるのに北平や宛ならともかく、ここから徒歩でも五〜六日の白帝城ですら、市場にジャガイモやスパイスの存在はなかった。
まあ、唐辛子はあったわけだが……紫苑に聞いたところ、唐辛子自体は北方でも普通に流通しているらしい。
もちろん麻婆も、だそうだ。
俺は気付かなかったのだが、なあ……
(意図的に食べ物のオーバーテクノロジーが、取捨選択されて広められている可能性がある……その意図とはなんだ?)
唐辛子はよくて、じゃがいもやスパイスがダメな理由……そんなものがあるのだろうか?
そこにこそ俺の違和感の謎があるように思える。
そしてその謎こそ……この街の謎なのではないかと思ったのだ。
ただ、いくつかの仮説は立てられても、立証がないことには意味がない。
できればそれを扱う商人に、もう一度話を聞きたいのだが……
そう思って一昨日スパイスを買った場所に来たのだが、そこにはすでに別の屋台が立てられていた。
あの商人は、この市場から既に立ち去ったらしい。
おまけに他の店でスパイスを売っている所に聞くと、自分達が何を扱っているのか、どこから仕入れているかもわからないという。
最初ははぐらかしているのかと思ったら、本当に知らないようだ。
ただ、自分達は雇われて商品を売っているに過ぎない、と……
挙句の果てには、別口でカマを掛けて警備兵の情報を漏らした商人すら、既に市場のどこにもいなかった。
周囲の屋台の人間はそのことを聞くと、皆口を噤んでしまう。
……やはり、俺の行動は監視されているらしい。
(華佗に急いで出発してもらって正解かもしれないな……危なかった)
これほど迅速に対応してくる相手となると、油断は出来ない。
だが、それでもこの街の謎は探る必要がある。
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ