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ファルスタッフ
第三幕その一
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うぞ」
 差し出されたその手紙を受け取って中身を見る。それを見てアリーチェ達はヒソヒソと話をしている。
「また引っ掛かるわね」
「しめしめ」
「餌にかかった」
「あとはこのまま」
 ファルスタッフは彼等に気付かない。クイックリーもあえて視線を彼に向けている。周到に芝居をして気付かせていないのだった。
 ファルスタッフはその中で手紙を読み続ける。そうしてクイックリーに問うのだった。
「今日の真夜中に王立公園でか」
「左様です」
 静かにファルスタッフに答える。
「そちらで」
「黒い狩衣でハーンの樫の木の下にだな」
「愛は神秘を好むもの」
 クイックリーはここぞとばかりに雰囲気を醸し出して述べる。
「アリーチェさんは貴方にお目にかかる為にあの伝説にすがられるのです」
「伝説にか」
「そうです。あの樫の木は魔術師や妖精の集まる場所」
 欧州にはそう言われる場所が結構多い。ましてやここはドルイドがいたかつてケルト人の場所だったイングランドだ。こうした話は無数にある。
「あの木の枝で黒い狩人が首を吊りまして」
「初耳だぞ、それは」
 ファルスタッフは随分この街にいるがそれは知らなかった。
「そんなことがあったのか」
「その亡霊が出るとも言われています」
「亡霊が?」
「そうです」
 イングランドはこういう話には事欠かない。ファルスタッフも当然こうした話は非常によく聞いている。今回も興味深くそれを聞きはじめていた。

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