第八話 走れ
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「ああ、くそっ。何処だよ!?」
完全に見失っていた。先程までは若干ネギ星人の背中が見えていたが、万全のあいつとあちこち傷だらけの竜夜では差が開く一方だった。
「くくっ、お先〜」
「西ぃ!」
見えないがなんとなく笑っているのが分かった。悔しいが追いつけないし、何より見えない。
眼の端に何かが入り込む。竜夜はその瞬間、名前を呼んだ。
「こい! ジョセフィーヌ二号!」
「わふっ!」
呼ぶとすぐやってきた。流石動物。俺なんかより速く、体力もありそうだ。
「はぁはぁ、あいつ、ネギ星人を、捕まえて来い!」
「わふ?」
やっぱりだめか。少しは期待したがだめだったようだ。だがなんとなく藁にもすがる思いで、命令した。
「ネギの匂いがする奴を捕まえて来い!」
「……わふっ!」
え、と口にする前に凄まじいスピードで駆け抜けていく。数秒後には見えなくなっていた。
「……やべぇ、主婦が危ない!」
つい勢いで言ってしまった。必死だったとはいえ、かなりアバウトな命令だ。下手をすれば一般人があのスピードで突っ込まれたら、確実に死が待っている。
少し考えて、犬を追いかけることにした。結局は手がかりが何一つ無いのだ。このままあても無く走り続けるのと、犬を追いかけるの。どっちもどっちたが、手がかりが無いよりかはいい、と思う。
犬ですら見失ったが、あの速さならしょうがないと割り切り、直進する。頭のいい犬なら鳴き声をあげるだろう。そう信じて、足は止めない。
「……うしっ! 聞こえた!!」
勢いを殺さぬまま、左折。やや行き過ぎていたが、反転する時間すらも惜しい。徐々に大きくなる泣き声、それと共にだんだんと泣き声の回数も減っていく。何かあったのかも知れない。
「いたぁ!」
少し遠いが、眼に入った。犬は刃物がついている方の腕に噛み付いている。傍らには、岸本が震えている。
幸い敵はこちらに背を向けている。銃を腰から引き抜こうとしたが、落としてしまったようだ。少し舌打ちをして、なるべく音を立てずに、そして速く。
気づくな
勢いは殺さない。あと十メートル。
気づくな
少し身震いする。あの時は襲われていて必死だった。あと七メートル
気づくな
手で拳を作り、振りかぶる。狙いは、背中のど真ん中。あと4メートル
気づかれた
犬を振り回した瞬間、背後から来る俺に気づいてしまったようだ。だけど、あと1メートル。
関係ない。一秒でも速く、届け。
距離が、ゼロになる。振り返ろうとしたのか、それとも避けようとしたのか分からないが、体をやや捻ったので、わき腹に命中した。流れていこうとする体を、
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