第2局
[1/3]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
ヒカルとあかりは、ヒカルの部屋でいつもの対局をしていた。
「ありません。」
そう言って、あかりは頭を下げた。
「あーん、ここ読み間違っちゃったー。」
「そうだな、そこはハネちゃまずいな。じっと我慢して伸びだな。」
「そうだよね、その方が全然いい。」
「でも、ここのつけはよかったぜ。右辺が打ちにくくなっちまった、」
「へへ、そうでしょ。あ、上辺のここは?」
「二間に開くのも悪くはないぜ。ただ、この石との絡みがあるからな。そうだな、こっちにつけていって…。」
それはいつものヒカルの部屋での風景だった。学校から帰ったらすぐに、二人でお小遣いを出しあって買った碁盤でまず指導碁を1局。それから一緒に学校の宿題を終わらせた後は、ヒカルと佐為の対局。小学校入学以来ずっと続いていた、三人の日常だった。
「大体こんなところかな。」
「はい、ありがとうございました。」
あかりの指導はヒカルが行う。これが三人の中でのルールだった。
―週末はいよいよ子ども囲碁大会の日ですね。
「あーん、緊張しちゃうよー。」
「ははっ。でも、ホントに無理にいく必要はないんだぞ?塔矢が来るとは限らないし。」
ヒカルは少し心配そうにあかりに言った。
「ううん、大丈夫。ヒカルと塔矢君にはやっぱりちゃんとしたつながりを作っておくべきだと思うの。私の碁をみてヒカルに興味を持ってくれていれば…。」
「ま、塔矢がどう思ったかは置いといても、あかりは強くなったからな。オレと五子だもんな。」
「ふふーんっ、そうでしょ。」
―でも、二人ともずいぶん大きくなりましたよねえ。
「何だよ、佐為、突然そんなこと。」
―いえ、あんなに小さかった二人がってふと思いまして。
「でもなあ、まだあかりのほうが背が高いんだよなあ…。」
そんなヒカルのつぶやきに、思わず笑ってしまう二人。
「でも、追い抜かれちゃうんでしょ、私。今だけなんだから我慢してよ。」
ーそうですよ。男の子は体の成長が遅いんですから仕方ありませんよ。
「いや、分かってるけどさあ、悔しいんだよなあ。」
そんなヒカルを笑いながら、あかりは昔のことを思い出していた。
気がついたときには、いつも一緒に遊んでいる男の子だった。それがあかりにとってのヒカルだった。家が近所で、幼稚園が一緒。いつも一緒に二人で駆け回っていた。ヒカルは当時から小柄だったせいもあり、あかりにとってはやんちゃでかわいくて元気いっぱいな、弟のような存在だった。
そんなヒカルが、急におかしくなったのは幼稚園の年長組のときだった。明るかった笑顔が消え、走り回ることもなくなり、いつもじっと座って何かを考えるようになった。ヒカルの突然の変調に、あかりはもちろん周囲の大人たちも驚いた。ヒカルやあかりの両親も幼稚園の先生も、
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ