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ファルスタッフ
第二幕その十
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第二幕その十

「では皆さん」
「はい」
 フォードが一同に声をかける。皆それに頷いて答える。
「合図をしますので」
「その時に」
「では」
 早速その合図に入る。
「一、二の」
「一、二の」
 衝立に手をかけて。それで。
「三っ!」
「出て濃い悪党!」
 衝立を倒すとそこにいたのは。あのフたちだった。
「何と!」
「えっ、お父様」
「フォードさん」
 ナンネッタとフェントンだった。二人は抱き合ったまま呆然としている。
「どうしてここに」
「何故衝立に」
「何っ、何故御前が」
 まさかそこに娘がいるとは思わなかったので呆然としている。
「ここに。しかもフェントン君」
「は、はい」
「娘には近付かないように言った筈だが」
 顔を顰めさせて彼に言う。
「全く。君は」
「しかしあの男は何処に?」
 カイウスの関心はもうファルスタッフに戻っていた。腕を組んでいぶかしむ顔で言う。
「何処に雲隠れしたのだろう」
「あら、どうなったの」
「あらっ」
「奥様」
 メグとクイックリーのところにアリーチェが戻って来た。召使い達を四人程連れている。
「今までどちらに」
「召使い達を集めていたのだけれど」
「そうだったのですか」
「あの破廉恥漢を懲らしめてやる為に」
 得意げに笑って手を腰にやってポーズまでして言う。
「支度をしていたのよ」
「それがこの四人なのですね」
「そういうことですわ。さて」
「おや、アリーチェ」
 ここでフォードは娘達から顔を話して自分の妻に気付いた。
「今まで何処に」
「細かいお話は後で。それよりも」
「それよりも?」
「本日のメインイベント。さあ」
 彼女の合図で四人の召使い達がその洗濯籠を持ち上げる。そのまま窓のところに移動していく。
「いざこの籠を」
「籠を?」
「お堀の中へザブンと」
「そんなことをして何の意味があるのだ?」
「確かに」
「そんなことをしても」
 ピストラにもバルドルフォにもわかりかねた。
「意味がありませんぞ」
「一体何なのか」
「それは見てのお楽しみよ」
 しかしここでナンネッタが父達に言う。
「だから。見ていて」
「一体何が何なのか」
 カイウスも首を捻る。
「何が起こるのか」
「さあ、投げて」
 アリーチェが四人にまた言う。もう窓のところに来ている。
「いざ!」
「いざ!」
 この声と共に投げられた。洗濯物を撒き散らしながら舞い落ちる。そうしてお堀にダイビングする洗濯籠を皆が見るが落ちた時には。
「あ、あれは!」
「ファルスタッフ卿!」
「これが陽気な女房達の報復!」
 お堀の中でもがくファルスタッフを見てアリーチェが宣言する。
「見事それはなったのよ!」
「成程!」

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