第二幕その六
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第二幕その六
「貴女は王妃としても相応しい。宝石で飾られた輝かしい胸元を私の紋章でさらに見栄えよくすることを」
「私の胸をですか」
「そう」
実際に彼女の胸を好色そうな目で見ている。
「ダイアが煌き揺れる光の中でその愛らしい足が貴婦人の豊かな絹のドレスに包まれ虹よりも美しい光を放つでしょう」
「私は宝石も金も興味がありません」
優雅に、にこやかに笑ってみせての返事だった。
「首にスカーフを、腰に飾りを」
「それだけですか」
「後は頭に花。それで充分ですわ」
そう言って花瓶の白い花を一輪取って頭に差す。本当にそれだけだった。
「これだけで」
「人魚の如き美しさだ」
「お上手ですわね」
「二人きりで。何という幸せ」
「どうされますか?」
「罪を犯すでしょう。恋はチャンスを逃さずです」
実に自分に都合のいい言葉だ。
「ファルスタッフ様」
「貴女を想うことは罪なのか」
「いえ、それは」
「私がノフォーク侯爵にお仕えしていた時はスマートで爽やかで軽やかで優雅でした」
「今と同じですわね」
「それは」
笑って否定するがまんざらではない。その証拠に言葉を続ける。
「その頃私は春の四月であり五月、指輪の中を潜り抜けられる位スマートで」
「けれど貴方は」
アリーチェは白々しい文句を続けるファルスタッフに対して言ってきた。
「愛しておられるのではないのですか?」
「貴女だけですが」
「メグは。どうなのですか?」
「知りません」
これまた平気で嘘をついた。
「本当ですか?」
「はい、貴方だけです」
そう言ってアリーチェを抱こうとする。
「ですから。今は」
そのまま一気にいこうとする。ところがその時だった。
「奥様!」
二階からこっそりと下りてきていたクイックリーがいきなり出て来てアリーチェに大声で叫ぶ。
「どうしたの?」
「メグさんが貴女にお話があると来ていますわ」
「メグが!?」
「はい、そうです」
「むっ、これはまずい」
もう一方の狙っている相手なのでファルスタッフは当然バツの悪い顔になる。
「ここは何とかしないと」
「もう凄い有様でこちらに来ておりますが」
「そう。それじゃあ」
「ここにいてはまずいな」
「どうされますか?」
「隠れましょう」
とりあえずは、であった。ファルスタッフは言うのだった。
「何処かに」
「それでしたら」
「いい場所がありますわ」
その時とばかりに、内心会心の笑みを浮かべつつアリーチェとクイックリーはファルスタッフに対して告げた。実にさりげなくを装って。
「衝立の後ろに」
「そこですな」
「ええ、そこに」
「どうぞ」
「わかりました。では」
ファルスタッフはそれに従いその衝立の後ろに身を隠す
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