十三話 「依月」
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が出て来て時間もねぇって時にお誂え向きにお前が倒れてくれたってわけだ。ワンころのいない今のお前ならオレでも十分御せるからなぁ」
犬扱いされた白に同情するが俺が白に望んでいるのも同じ役割だ。こんなことにならないようにと拾っていたのだが、世の中というのは上手くいかないらしい。努力が報われるのは創作の世界だけで育てたまま一度も日の目を見ずに終わる可能性などいくらだってある。
それにしても“もしも”何て、自分がどれだけ信用されてないのかあからさまに言われ、いっそ笑いがこみ上げてきそうだ。
「さて、倒れてよほど頭がバカになってでもない限り事情はわかったはずだ。これ以上時間をかける事もあるめぇ。ちゃっちゃと話せ。手が疲れて滑るぞ」
「……あなたと同じですよ。死にたくなかった。死ぬわけにはいかなかった。だからその為の準備をしたかったんです」
どんな風に言えば納得させられるだろう。どこまで言っていいのだろう。
そんな風に考えていたのに、一度口を開けば言葉は止まらなかった。次から次へと言葉が流れ出ていく。
「どうしても死ぬわけにはいかなかった。けど、知ってる未来は物騒なことばかりで自分の力だけじゃ無理だと思った。だから先回りを……何が起こるのか知っている場所で、陰に隠れようって。たとえそれが爆心地でも、被害がどこにまで及ぶかさえ知っていれば何も知らないよりいいって思ったんです」
「白を拾った理由は? 体のいい駒か」
「ええ……あれを読んだなら、白に才能があるのは分かりますよね。勿体無いですしどうせ数年後に死ぬなら別にいいじゃないですか」
「ゴロツキ殺した理由は何だ。隠れるつもりなら要らねぇんじゃねぇか」
「“もしかしたら”に備えるのは大事だと思いませんか。出来る限り目立たず静かにいたいけど、流れ弾がないとは言い切れない。知っている通りとも限らない。それに忍がいない波の国なら襲った相手が手強い可能性も低く、いい練習相手になりそうだったので。初戦が木の葉周辺とかなら怖くてできませんよ。バレる可能性も低そうでしたし」
単なるゴロツキ程度なら気にする必要はない。けれど忍の制度がある国となれば気をつける必要も出てくる。抜け忍や中途退役者、家族から教えられた者にアカデミーで足を終えた者。そういった相手がいる可能性も跳ね上がる。
真っ当な教育を受けて強くなれないのなら経験を積むしかない。ならば弱い相手から潰して段々と上げていく必要がある。もし最初から手強い相手に引っかかればそこで終わりだ。事実、最初の一回目には“準備を欠かさない”という少し面倒な相手もいた。
聞かれたことに淡々と答える俺におっさんは少し訝しんだ視線を向けてくる。
「お前、やけに素直だな。もう少し口篭ると思ってたが」
動かす意欲も起きない重い体
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