第五十三話 エル・ファシル公爵
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ない」
「!」
驚いてエーリッヒの顔を見た。エーリッヒは悪戯をした子供のように笑みを浮かべている。
「どういう事だ?」
「レベロ議長では選挙に勝てないよ。彼もそれは分かっている、立候補はしない、彼は別な人間を応援する事になる」
どういう事だ? じゃあヤン提督を説得したのは……。
「エル・ファシル公爵はどうなる? それなりの人物が必要なはずだが……」
俺が問い掛けるとエーリッヒはおかしそうに笑い声を上げた。
「居るじゃないか、適任者が。ローエングラム公が一目置いてエル・ファシル公爵の意味を理解している人間。エル・ファシル住民からの人気も高い、帝国でだって知名度は高い筈だよ」
「それって、まさか……」
エーリッヒがまた笑い声を上げた。
「そう、ヤン・ウェンリー提督だ。彼くらいエル・ファシル公爵に相応しい人間は居ないだろう。レベロ議長も彼が適任だろうと言っているよ、まさに最高のカードだ」
「……」
「まあいきなりエル・ファシル公爵になれと言ったらあの人は逃げ出すからね。とりあえずは選挙応援で誤魔化さないと……」
溜息が出た。
「皆が卿をロクデナシ、根性悪、ペテン師、そう呼ぶ理由が分かったよ」
「私個人の利益のためじゃないよ、皆のためを思ってだ」
「それは分かるさ、宇宙の平和を守るロクデナシ、ペテン師か、冗談みたいな話だな」
エーリッヒが三度笑った。
「正義の味方なんて御伽噺の中だけだ。現実世界では見た事が無いね」
確かにそうかもしれない、でもな、エーリッヒ……、また溜息が出た。
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