第五十三話 エル・ファシル公爵
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能で節義のある人物だって頭領は見てるんだ。まあそうかな、トリューニヒト前議長なんかよりはずっとましだと思う。ヤン提督もレベロ議長が映ってもTVのチャンネルを変えようとしないし。
「そうなればエル・ファシル公爵が侮られるだけではありません。民主共和政そのものがローエングラム公に、いや帝国の文武の重臣達に侮られるのです。民主共和政等何の価値も無い代物だと。平民の意見等政治に取り入れる必要など無いと。それがどれだけ危険な事か……。ヤン提督、貴方になら分かるはずだ」
「それは分かりますが……」
「幸いですがローエングラム公はレベロ議長に好意を持ったようです。それにレベロ議長はエル・ファシル公爵の役割を十二分に理解している。現時点でレベロ議長以上にエル・ファシル公爵に相応しい人が居るとは思えません」
「……」
ヤン提督は無言だ。嫌なんだろうなあ、選挙を手伝うとかって。
「民主共和政が無くなった時、ヤン提督は耐えられますか? 無くなってから悔やんでも遅いですよ」
「……」
「民主共和政は今弱い立場にあるんです。あれが嫌だこれが嫌だ等と言っている場合ではないでしょう。最高のカードを切る必要が有る、そうでは有りませんか?」
「……」
「黒姫の頭領は私に首輪を付けようとしているんだ」
「どういう意味です、首輪って」
「私が反帝国活動をしないように枷を嵌めようというわけさ」
ヤン提督が不愉快そうに言ったのは頭領とミュラー提督が帰ってから三十分程経ってからだった。二人にはエル・ファシルに行くかどうかは答えていない。
「ガンダルヴァ星域の会戦が終わった時から私が反帝国活動をするんじゃないかと危惧していたからね。私をエル・ファシルという檻に入れたいんだろう」
「じゃあ、行かないんですか?」
僕が訊き返すと提督は一瞬黙り込んで僕を睨んだ。
「……いや、行くよ。選挙応援は不本意だが民主共和政が無くなるのはもっと不本意だ。彼の思い通りに動くのは癪だけどね……」
帝国暦 490年 8月 3日 ハイネセン ナイトハルト・ミュラー
ホテル・ユーフォニアに戻る地上車の中エーリッヒは酷く上機嫌だった。
「エーリッヒ、卿はヤン・ウェンリーがエル・ファシルに行くと思うのか? 彼は返事をしなかったが」
「多分行くだろうね、嫌なら嫌だと返事をしているさ。黙っていたのは不本意だったからだろう」
「もし、駄目だったら」
「大丈夫、他にも彼に影響力のある人にエル・ファシルに行くようにと勧めてもらうからね。民主共和政を残す為には君の力が必要だと言えば彼は断れないと思うよ」
自信が有るようだ、微塵も不安を感じさせない。
「レベロ議長がエル・ファシル公爵か……」
「レベロ議長はエル・ファシル公爵にはなら
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