第五十三話 エル・ファシル公爵
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いけど……。
「それだけにここに残るのは危険です。担ぐ方も担がれる方も不幸になる。エル・ファシルに移住した方が良いでしょうね」
「……」
うーん、そうだよな、僕も危険だと思う。ヤン提督も分かっているはずだけど……。はっきりしないのはハイネセンに居る人を見捨てるのが嫌なのかな。一緒に戦った人も居るだろうし……。
「それに、エル・ファシルでは貴方にやってもらいたい事が有ります」
え、やってもらいたい事? ヤン提督だけじゃない、ミュラー提督も訝しげな表情をしている。
「現時点ではレベロ議長が暫定的にエル・ファシル公爵になっています。しかしレベロ議長がエル・ファシルへ移住した後、エル・ファシルの現政府と調整が済んだら議長はエル・ファシル公爵を辞任する事になっています」
その事はレベロ議長自身が公式に声明を出している。大方の人間は当然だと思っているようだ。
「新たにエル・ファシル公爵を選ぶ選挙が行われますがレベロ議長もそれに立候補します」
え、そうなの? 選挙に出るの? ちょっと驚いてヤン提督を見た。ヤン提督も驚いている。
「しかし、勝つのは難しいでしょう。何と言っても同盟は滅んだのです。それなのにレベロ議長がそのままエル・ファシル公爵になるのは……」
そうだよ、皆も暫定だから今は認めているけど正式にとなったら反対する人が多いに決まっている。
「そうかもしれません。そこでヤン提督にレベロ議長を応援して欲しいのですよ。貴方はエル・ファシルの住民にとっては恩人です。その影響力でレベロ議長を公爵にして欲しいのです」
「それは……」
ヤン提督が口籠った。多分不本意なんだろう、ちょっと顔を顰め気味だ。
「もちろんレベロ議長以上に適任者が居れば別です。そちらを応援してもらって結構ですよ」
「……」
「ヤン提督、エル・ファシル公爵を考えたのは私です。民主共和政については多少疑問もあるが統治される側の意見を政治に取り入れるという考えは必要だと思う、だから民主共和政を残す方法を考えました。帝国の統治に利益をもたらす装置としてです。それが民主共和政を存続させる保証になると思いました」
うわ、凄い事を聞いちゃった、皆驚いてる。エル・ファシル公爵って黒姫の頭領が考えたんだ。この人、どういう人なんだろう、戦争も出来るけど政治にも凄い見識を持ってる。ヤン提督以外にもこんな人が居るんだ。いやそういう人がローエングラム公に協力している。帝国って軍事力だけで同盟を圧倒した訳じゃないんだ……。
「ローエングラム公は有能で節義のある人物を好みます。逆に嫌うのは無能で貪欲な人物です。だからエル・ファシル公爵には有能で節義のある人物に就任してもらわなければなりません。訳の分からない人物になって貰っては困るのです」
つまりレベロ議長は有
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