第五十三話 エル・ファシル公爵
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らない理由の一つだって言っている。そして帝国は非常に強かだとも。
この移住問題、実は僕達にも関係している。レベロ議長からヤン提督にエル・ファシルへの移住希望を出すようにって要請が有ったんだ。エル・ファシル政府にはレベロ議長から受け入れるように頼んでおくからって。議長はヤン提督の戦略家としての識見がエル・ファシルの安全保障には必要だと考えているらしい。
もっとも議長がエル・ファシル政府に頼まなくてもヤン提督なら受け入れてもらえると僕は思う。何と言っても提督はエル・ファシルの英雄なんだから。エル・ファシル政府が断る事は無いはずだ。ただヤン提督はあまりその気じゃないみたいだ。どうするんだろう? エル・ファシルのキャゼルヌさんからもこっちに来いって誘われたんだけど提督ははっきりとは返事しなかった。ハイネセンに残るのかな。
黒姫の頭領がミュラー提督と共に訪ねてきたのは午後三時を回ったころだった。最初訪ねてきたのが頭領だと知ったヤン提督はちょっと顔を強張らせていた。苦手意識が有るみたいだけど拒絶する事は無かった。今はリビングで四人で紅茶を飲んでいる。僕は遠慮しようと思ったんだけど黒姫の頭領が一緒にって誘ってくれた。ちょっと嬉しかった。ヤン提督も頭領もミュラー提督も穏やかな雰囲気を醸し出している。この三人がガンダルヴァで戦争したなんて信じられない。
「ローエングラム公がヤン提督に仕官を求めたそうですが断られたとか」
黒姫の頭領が問い掛けるとヤン提督は少し困ったような表情をした。
「ええ、どうも私は宮仕えが苦手で」
頭領はヤン提督の返答に二度、三度と頷いた。
「残念ですね、ローエングラム公は本気で貴方を旗下にと思ったのですが……。まあ確かに帝国は同盟に比べれば多少権威に煩い所もあるかもしれません。ヤン提督は窮屈に感じるかもしれませんね」
「窮屈に感じているのは卿も同様だろう」
「否定はしないよ」
頭領とミュラー提督が笑い声を上げた。なんか良い感じだ。
先日ヤン提督にローエングラム公から帝国軍に出仕しないかって打診が有ったんだけどヤン提督は軍の仕事には就きたくないって断った。本心だと思うけど専制君主に仕えたくないっていう思いもあるんじゃないかと僕は思っている。でも頭領の言う通り、煩わしいっていうのも有るかもしれない。
「エル・ファシルに移住されるのですか?」
「……迷っています、御迷惑ではありませんか?」
「ハイネセンに残られるよりは良いと思いますよ」
「……」
そうか、ヤン提督が迷っていたのって帝国がどう思うかを考えての事だったんだ。
「エル・ファシルは今非常に好景気です。あそこの住人は現在の好景気が続く事を願っている。ヤン提督を担いで馬鹿げた事を考える人間は居ないでしょう。居たとしても少数です、他の多
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