第一幕その一
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を滅茶苦茶に破壊してくれましたな」
「何だ、そんなことか」
カイウスの抗議を耳糞をほじりながら聞いていた。
「そんなこと!?」
「あんたのところの女中には何もせんかったぞ。それは感謝せよ」
「それはまた御親切なことで」
怒ってはいるが嫌味は隠さない。
「あんな目やにの出たお婆さんにはね。全く寛大なお話で」
「だから感謝せよと言っているのだ」
「それで貴方が騎士なら答えてほしいのですが」
「答えか」
「左様で」
「では答えよう」
カイウスの言葉を受けて本当に答える。
「わしはあんたの言う通りのことをやった」
「はい。それで?」
「やりたいからやった。それだけだ」
「王室評議会に訴えてやる!」
あまりにもふざけた答えなので遂に怒りを爆発させた。
「お好きなように。だが一つ忠告しておこう」
「何ですかな」
「あまり怒ると健康によくないぞ。それだけだ」
「どうも御親切に」
さらに怒りに油を注いで楽しんでいるのは明らかだった。
「御忠告痛み入ります。しかも」
「今度は何じゃ」
「昨日私にお酒を御馳走して下さいましたね」
「上等のラム酒だ。満足しただろう」
安酒だ。それを振舞ったと自慢しているのだ。
「ええ。おかげで二日酔いで。最後の方はもう意識がなくて」
「まだ鼻が赤いな」
「その鼻が赤くなるまで飲ませてあんたは」
「わしが何をしたというのだ?」
「財布がなくなってるんですよ。ほら、そこの」
ロビーの端で酒を飲んでいる痩せた男を指差す。帽子に白い羽根をつけて黒尽くめで変に洒落た格好をしている。その男を指差したのだ。
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