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戦場のヴァルキュリア 第二次ガリア戦役黙秘録
第1部 甦る英雄の影
第1章 人狼部隊
鋼の虚構
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す。先日、車庫に集まる前に偵察で見つけたのだ。オラトリオ鉄橋の付近は草むらになっているので、アンリにとっては動きやすいことこの上ない。口径を帝国、ガリアどちらにも対応した部隊専用の銃を構えて炎をあげる鉄塊を通り抜け、基地の敷地に入る。
 帝国戦車は1台も見当たらず、トラックに機銃を載せただけの情けない戦闘車輌がカサブランカの六連装機関砲(ガトリング)に破壊される。機関銃を構えた帝国兵は櫓の上に陣取ったヒルデに頭部を撃ち抜かれ、重装歩兵は対戦車槍に吹き飛ばされ、突撃銃を手にした者は1個小隊の弾幕に斃れる。

「敵は総崩れだ! 一気に司令部まで走れ!」

 さらに檄を飛ばすアンリの肩をマルティンが背後から押さえる。

「隊長さん、その必要もなさそうだぜ?」

 ウインクで「見てみな」と示したオラトリオ鉄橋基地の司令部の上には帝国の旗ではなく、降伏の白旗が掲げられていた。帝国の兵士も武装を解除し両手を挙げている。

「攻撃停止だ。みんなご苦労……任務は成功した」

 橋の上に歓喜の雄叫びが上がる。
 死地から生還出来たことを歓ぶ者、亡き友の仇をとれたことに涙する者―勝利の中で、アンリは次の作戦を練っていた。


 ・ ・ ・ ・


 メッペル基地の司令、サンマーユ中佐を引き取り、アンリたちはメッペルへ引き返した。敵の司令官がダルクス人であり、そのことを理由に満足な兵を与えてもらえないまま(サンマーユを守るため)大軍が配備されたこの地に赴任されたようだ。才能でのしあがったことが上層部の反感を買ったそうだが、それがガリア軍勝利の要因でもある。
 士官室の椅子に座ったサンマーユは上機嫌だ。彼の副官が指揮した作戦で勝利を勝ち取ったとばかり考えていたからだ。しかし、アンリの報告を聞いて態度が一変する。副官の功績ならば自身の評価も上がるが、特務隊と義遊軍しか活躍していないなど、下手をすれば自分の失態を理由に処罰があるかもしれないからだ。

「奴の家はなまじ力があるから下手に手出しできんし……このままではワシが処罰されかねんぞ〜っ!?」

 狼狽して部屋を徘徊する(横幅が)大きな身体の司令官を見てもアンリは顔色一つ変えないで直立したままだ。敵前逃亡で銃殺にしてしまえば失態はなかったことになるが、貴族というしがらみによってそれも叶わず、八方塞がりなのだ。

「帝国にでも殺されておればよいものを……おお! その手があるじゃないか!」

 あーでもないこーでもないと呟いていたサンマーユは突然徘徊を止めて何かを閃いたように手を叩いた。脂ののった腹を揺らしながら振り返ると、アンリに詰め寄る。

「帝国の指揮官はどこかね? いるんだろう?」

「は。捕虜として営倉にて身柄を拘束しております」

「よろしい。君はさがり
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