裏通りの鍛冶師
とあるβテスター、転がる
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バタァン!と勢いよく扉を開けて出て行ったアルゴを見送り、僕は再びベッドに寝転んだ。
流石に今度は枕を抱えてローリングするということはなく、仰向けになって天井を眺める。
うつ伏せに寝転がっていた時とは違い、胸が圧迫されて苦しくなるようなことはなかった───けれど。
「るーちゃん、すっごく怒ってたねー?」
「……、そうだね」
ちょっと……気まずい。
僕の気にしすぎだということは、わかっているのだけれど。
「あ、そうだ。ユノくん、買ってきたものわたすねー」
「………」
いつものように、ふにゃりと笑うシェイリ。
いつも通りの、気の抜けるような、間延びした口調。
だけど、それは本当に───シェイリなんだろうか。
僕が知っているシェイリは、本物のシェイリなんだろうか。
もしかしたら。
僕が見てきた彼女は、僕がシェイリだと思っていた彼女は、まったくの偽りの顔で。
あの時一瞬だけ見せたであろう、あの表情こそが。
硬くて重くて暗い、そんな雰囲気を纏った姿こそが、彼女の本当の姿なのかもしれないだなんて。
そんな───どうしようもないことを、考えてしまう。
見慣れているはずの彼女の笑顔を、見つめることができずにいる。
「……?ユノくーん?トレードだよー?」
「………」
さっきはアルゴがいたから、余計なことは何も考えずに済んでいた。
だけど、こうして二人きりになってしまうと───否が応でも、あの言葉を思い出してしまう。
ひとりは寂しいと言った時の、彼女を思い出してしまう。
彼女が突然いなくなってしまうかもしれないと、思ってしまう───
「……ああもう、だめだだめだ!」
「ユノくん?」
と、そこまで考えたところで。
またもや考え込みそうになるのを中断し、ネガティブな思考を叩きだすように頭を振り払う。
「ほんっと、どうして僕ってこうなんだろうね……?」
また、いつものパターンだ。
考えれば考えるほど、思考がより悪い方向へと向かっていく。
僕の、悪い癖だ。
悪い性質と───いってもいい。
「……なんかもう無理。考えるの疲れた。うあー」
そんな性質の僕だから───いくら考えたところで、結果は同じだろう。
よって、思考を放棄。
ついでにプライドも放棄。
「もう無理だーうあー」
「ユ、ユノくん……?」
なんとも投げやりな声を出しながら、再び枕を抱えてローリングを開始する。
どうせ一度見られているんだ、プライドも何もあったもんじゃない。
むしろ存分に見せつけてやろうじゃないか。
さあシェイリ、存分に見るがいい。その目に焼き付けるがいい。
刮目せよ、刮目せよ、刮目せよ!
これが、考えることから逃げ出した者の姿だ───!
「うあーうあー」
「ユ……、ユノくん、とれーど……
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