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星の輝き
第1局
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りの打つ様子を見つつ、アキラは盤面を考えていた。
―いやしかし、それにしても。これはそれなりってレベルじゃない。ボクの打ち込みにも動じないし…。いや、動じないどころか、かろやかにかわされている?ボクが局面をリードしきれない。
―こんな子供がいるんだ。
置き碁とはいえ、久々の強敵相手に、アキラの心は躍っていた。

 残りは小寄せのみの局面になり、それまで横でじっと見ていたヒカルが声をかけた。
「ここまでだな、あかり、ちゃんと数えてるか?」
「…うん、2目足りない。」
あかりは悔しそうにつぶやいた。
「すごいね、ちゃんと終局まで読めてるんだ。」
思わずアキラも声をあげた。
「びっくりした、ずいぶん強いんだね。途中、悪手もなかったし、ボクも本気になったよ。」
アキラ自身、三子の置き碁でここまで本気で打ったのは久々だった。普段置き碁では指導碁を打つのだが、そんな手加減ができる相手ではなかった。
「ああ、大体はよかったんだけどな。」
そういってヒカルが盤面を指差した。
「あかり、ここの当たりを打たれたところで、ついだよな。」
「うん。そこは手を抜けないって思って。」
「ここは、その前に、こっちをハネておくべきだったな。」
「「あ!」」
ヒカルのその指摘に、二人の声がそろった。
「そうか、そのタイミングだと、切れないからはみ出される…。」
「うーん、そんな手があったんだー、全然気がつかなかったよ。」
ヒカルの指摘に戦慄するアキラと、悔しそうなあかり。
「ま、その後の展開も難しいところだけどな。でも、なかなかいい碁だったぜ!」
そうにっこり笑うヒカルに、あかりは照れくさそうに微笑んだ。
「あ、イケネ、もうこんな時間だ、あかり、ほら、帰らなきゃ。」
ヒカルは、唐突にそうあかりをせかしだした。わざとらしい目線を送りながら。
「あ、そ、そうだったね。ごめん、塔矢君、石片付けるね。」
「…あ、ボクがするからそのままでいいよ。」
アキラは上の空でそう答えた。盤面の指摘を考えるのに必死で、他は上の空だった。

 ふとアキラが気がついた時、目の前の席には白いスーツに眼鏡をかけた、鋭い顔立ちの青年が腰をかけて碁盤を眺めていた。
「緒方さん。あれ、さっきの子達は…。」
「もう、さっき帰ったわよ、アキラくん。打ってくれてありがとうって言ってたわよ。」
そう言いながら、市河がお茶を持ってきた。
「はい、緒方さん。で、ずいぶん熱心に眺めてるけど、あの子どうだったの?」
「…強かったです。」
「あの子?相手は子どもなのか?」
そう尋ねる緒方に、市河が、
「アキラくんと同い年って言ってたわね。今日が碁会所デビューなんですって。かわいい女の子でしたよ。」
「碁会所デビュー…、たいしたもんだ。塔矢アキラ相手に三子でここまで打
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