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ドン=パスクワーレ
第二幕その十一
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し」
「お金がどれだけ消えたと思ってるんじゃ」
 パスクワーレはこのことを特に抗議するのだった。
「全く。好き放題しおって」
「けれど叔父さん」
 エルネストがその怒る叔父に告げてきた。
「あれ位じゃ我が家にとっては全くどうってことないじゃない」
「黙れ、御前もグルじゃろうが」
「そうだけれどね。あれ位じゃ何てことないじゃない」
「むう、それはそうじゃが」
 少し落ち着いて頭の中で計算した上での返事だった。
「あの程度ではのう」
「家の使用人も給料があがっていい家具とかを貰えて喜んでるし」
「それはいいことじゃな」
「じゃあいいんじゃないの?」
 叔父に対して言うのであった。
「それで」
「そうじゃな。それもその通りじゃ」
 甥に言われて納得した顔になるのであった。
「ではよいか」
「うん。じゃあ」
「結婚は許す」
 落ち着きを取り戻しあらためて甥に告げた。
「跡も継がせるし財産もやろう」
「有り難う、叔父さん」
「有り難うございます」
 エルネストだけでなくノリーナも彼に対して礼を述べる。そしてまたマラテスタが言うのであった。
「では。話も終わりましたし」
「寝るか」
「いえいえ。家の人全てに起きてもらって」 
 彼は笑いながらパスクワーレに告げる。
「皆で祝いましょう」
「二人の結婚をか」
「そうです。本物の証明書もありますし」
 言いながら結婚証明書を見せるのだった。
「ですから」
「そうか。ではサインをした後は」
「屋敷中で祝福です」
「わかった。ではとびきりのワインと御馳走を出してじゃな」
「祝おうではないですか」
 早速音頭を取るマラテスタであった。
「皆で」
「そうじゃな。それでは」
 マラテスタの顔に満足している顔で頷くパスクワーレだった。そうして今高らかに持っていた鈴を鳴らし。
「さて、これから二人を祝おうぞ」
 早速使用人達が全て出て来て瞬く間にテーブルを用意してワインに御馳走も出していく。そのうえでワインを並々と注いだ杯を持って。
「乾杯!」
「乾杯!」
 皆で祝うのだった。けたたましい騒動は最後は賑やかな宴で終わったのであった。


ドン=パスクワーレ   完


                2009・9・30

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