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シャンヴリルの黒猫
57話「第二次本戦 (4)」
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ドンッ!

 薙払った勢いをそのままに左足を軸に一回転。渾身の回し蹴りを力負けし
てのけぞったロボに叩きつける。位置は胸元。

ボキボキッ
キャンッッ!!

 確かな手応えと共に、ロボが凄まじい勢いでふっ飛んだ。1回、2回と地面を跳ね、何とか舞台のギリギリで止まる。悪運の強い男だ。
 追い討ちはしなかった。流石に疲れたか、息を乱したアシュレイは剣を肩に担ぐと、

「よう…目は覚めたか?」
「う…ぐ……げほっ」

 うつ伏せで上体を起こし、ガハッと血を吐いたロボからは、先ほどの狂気が鳴りを潜めていた。体が限界だったのだ。
 ぜえぜえと荒い息を吐いては、口元の血を拭う。舞台の数メートルの端にいるのを自覚すると、ハッと笑った。

「てめえ……化け物か」
「さっきまで化け物も逃げ出すような形相だった奴に、言われたくはないな」
「へっ…違ぇねえ」

 大の字に寝転がり、1つ大きな深呼吸すると、すらりと立ち上がった。肩を回してバキバキと鳴らすと、またあの好戦的な笑みを浮かべる。今回は、獲物を見る目ではない。好敵手と認めた相手を見る、眼だ。

「待っててくれて、ありがとよ」
「問題ない。次で決めるぞ」

 アシュレイも剣を再び鞘に戻し、軽く手首を振ると、柄を握り直した。腰を落とし半身を引いて、いつでも飛び出せる準備をする。

「オレの獣化を力業で解いた奴ァ、お前で4人目だ。誇れよ、お前は強ぇ」
「それは光栄だな。因みにその3人は?」
「ハッ! 最初にお袋、次に嫁、最後は――」

ダンッ!!

 ふたりの足元が爆発した。
 煙が収まると、人影が2つ、互いに背を向き合っている。ひとつは拳を前に突き出し、ひとつは剣を振り切っていた。

...チン

 剣を鞘に収めた音がした。

「なかなか血肉沸き踊るいい試合だったよ。――【狼王】」

 バタリとロボが倒れる。既に意識はない。即座に医療魔道士がぞろぞろ舞台に上ってきた。
 アシュレイも自力で歩いてだが医務室へ向かった。彼も無傷ではない、どころか、傷だらけだ。安物のコートはAランカーとのぶつかり合いで既にボロボロだった。

『この試合、誰が予想したでしょうか!! 勝者はFランカー剣士、アシュレイ=ナヴュラアアアアアア!!!!!』

ワアアアアアアアアア!!!!!!

 前代未聞、新進のFランカー冒険者が決勝進出を果たした。
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