3 「★★★★『毒怪竜ギギネブラを追え!』」
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にある。つまり味覚の優劣は関係ないのだ。
どんなに屈強な肉体を持っていようとも鍛えられない体内の刺激、それもトウガラシの後引く辛さは、寒冷地に生息するギギネブラにとって縁のないものだった。しかも少しずつ飲む用に作られた物を、瓶まるごと3本を一気に。
「えげつねえ……」
後方で菖蒲がつぶやいた。
今手に抱えているホットドリンクを3本一気飲みさせられたら、並みの人間ならショック死するかもしれない。なにせ人間の1日の限界摂取量が5本と決まっているような代物の半分以上を一口に含むのだから。
まさに火を吹く辛さ。
怒りを露わに襲いかかってきたギギネブラをひょいと躱して、舞うように美しく刀を一閃。炎が宙を舞った。
突進を止め2,3歩よろめいた毒怪竜の背に、瞬く間で更に5撃の痕を刻む。黒い焼痕からは肉の焦げる嫌な臭いが立ち上った。ひるんだギギネブラは尾を振り回すが、それより一瞬早く凪が地を蹴り跳び上がって避ける。
竜の尾を横薙ぎに払うと、激痛にギギネブラの頭が反り返った。血とともに飛び散ったのは、白雪を紫に染める外分泌腺。
凪は一刀のもとにギギネブラの毒腺を分断したのだ。
「こりゃ……すげえな…」
ファンゴを殲滅したナギの姿を菖蒲は見てはいないため、これが成長した凪が戦う姿として最初に目にするものだが、これだけでも既に凪が普通のハンターとは一線を画す存在であることが伺い知れた。
防御のできない太刀を手にして、一体誰がギギネブラの首振り攻撃を上に回避するという選択肢を取るだろう。
飛竜を相手にして、一体誰が一撃でその皮を斬り裂けるだろう。
菖蒲の感嘆を知るはずもない凪は、悲鳴を上げて仰け反ったギギネブラに追い討ちをかける。
凪を踏み潰さんと上体を持ち上げたネブラの腹へ恐ることなく踏み込み薙ぎ払い、そのまま足を止めることなく駆け抜けた。
雪煙を上げて毒怪竜が無防備になる数秒。刀を逆手に持ち振り上げた凪は、迷うことなくそれを翼膜に突き刺して飛竜を凍土に縫い付けた。火を噴く刀は一息に凍った大地ごと膜を裂き、その翼は二度と再び風を捉えることはない。
絶叫してひっくり返ったギギネブラは、もはや地を這うギィギよりも哀れな姿をさらけ出していた。
腹の毒腺に入った1本の線。
そこを寸分違わずなぞるように、凪の刃が線を舐めた。
ザクッ
切れる毒腺、吹き出す血。
ギギネブラはもう動かない。
すでにその心臓の袋は、銀火竜の刃の餌食となっていた。
「ふぅ。ったく、汀と岬はまだ来ないのか?」
「た、倒したのか」
「終わりましたよ。折角なんで素材とかもらっていきましょうか。ちょっとポーチに入れたくないけど」
ぴくりとも動かないギギネブラを遠目に確認してから、菖蒲がほっと息をつ
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