裏通りの鍛冶師
とあるβテスター、祈る
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ろ転がってみる。
なんだかキャラが崩壊している気がするけれど、リリアはまだ裏通りで自分の世界に浸っているだろうし、シェイリは例の如く買い出し中だ。
いつもならそろそろ戻ってくる頃合だけど、今日の狩りでの消耗具合を考えれば、あともう少しくらいは時間的猶予があるだろう。
誰も見ていないんだから、誰の目を気にする必要もない。
存分にキャラ崩壊してやろうじゃないか。
「もーーー!もおおおおーーー!」
ごろごろごろごろ。
ごろごろごろごろ。
難しいことを考える余裕をわざとなくすように、奇声を発しながらベッドをごろごろ。
「わっかんねぇーーー!うあーーーーー!」
そうしているうちに。
ベッドをごろごろしているうちに。
頭の中のもやもやは相変わらず存在しているけれど、大声を出したことで、少しだけ気分がすっきりしたような気が───
「……何してるんダ、ユー助?」
「は?」
───してきたと思った、その時。
部屋には僕一人しかいないはずなのに、何故か入口のほうから声をかけられた。
「………」
動作停止。
思考も停止。
瞬間冷凍よろしく硬直する僕。
「イヤ……、ユー助も色々大変だもんナ、ウン」
「………」
……おかしい。
SAOの宿屋は基本的に施錠可能で、パーティメンバー以外の人間が誰かの部屋に入るには、その部屋に宿泊しているプレイヤーの許可が必要なはずだ。
だというのに、どこぞの情報屋特有の、コケティッシュな鼻音混じりの声が聞こえてきたのは何故なんだろうか。
キャラ崩壊上等で枕と一緒にローリングしていた僕としては、こんな姿を進んで誰かに見せたいと思うわけがない。
つまり、僕は許可を出していない。
イコール、今この部屋には誰も入ってこれない……はずだ。
僕以外は誰もいないはずの部屋。
何故か聞こえてきた声。
僕は誰にも入室許可を出した覚えはない。
よって、結論。これは幻聴だ。
「……一日に二回も幻聴を聞くなんて、疲れてるのかなあ」
「ユー助の境遇には同情するガ、現実逃避はお勧めできないナ」
幻聴に哀れまれてしまった。
「まア、オレっちも仕事を手伝わせた身だからナ。今のは見なかったことにしておいてあげるヨ」
「……、それはどうも……」
幻聴───もとい。
何故か僕の部屋にいたアルゴは、恩着せがましく言う。
その可哀想なものを見るような目をやめてほしいところだけど、口止め料をサービスしてくれるのはありがたい。
どうしてアルゴが僕の部屋にいるのかはわからないけれど、こんな姿を見られた以上、何としてでも口止めする必要があると思っていたからだ。
着替えもせずに奇声を発しながらベッドでごろごろしている姿なんて、シェイリに見せるわけにはいかない。
守ると言った手前、情けない姿
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