第1部 甦る英雄の影
第1章 人狼部隊
ヴェアヴォルフ
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、こちらから指示を与えられんのだ。義遊軍を率いあの忌々しい帝国軍に一矢報いたまえ」
「正規軍はその間に何を?」
「メッペル基地と市民の防衛だ。奇襲もありうるからな」
「了解しました。後方は中尉にお任せします」
クメールは言うだけ言って基地の屋内に戻ってしまう。民間人の義遊軍を投げ出し、自分は安全地帯で悠々と作戦の成功を待つ腹である司令官代理の魂胆に、『ヴェアヴォルフ』の隊員は不満を露にする。特にリジィ・ノーデスは空になった椅子を蹴り飛ばすほどだ。弟のグイン・ノーデスは姉を止めようと慌てている。
「何なのアイツ! ちょっと金のある貴族だからって偉そうにしてんなっつーの!」
「姉さん、アルザス中尉が成り上がりの家柄だなんて言ったらダメだよ……」
「グイン、お前がバラしてんぞそれ。……そいつはともかくだ、正規軍が来ねえとなると、その作戦は使えないぜ。どうすんだ、隊長さん?」
トラックにもたれかかり腕を組むガイウスに、アンリは真面目な顔で答える。
「正規軍は便りにしていない。ランシールで奴の人間性は知り抜いているからな。義遊軍と作戦会議だ。10分後、車庫に集まってくれ」
指示を出してどこかへ行ってしまったアンリを見て、隊長一同は「変なのが来た」と肩をすくめるばかりだった。だが、マルギット・マウザーはこの時点で『ヴェアヴォルフ』の勝利を確信していた。
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