第1部 甦る英雄の影
第1章 人狼部隊
ヴェアヴォルフ
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てるぜ」
予想外の光景に固まっていたアンリの前に禿頭の巨漢が立ち塞がる。筋骨隆々にして武骨、制服の袖はもぎ取られ、逞しい二の腕がこれでもかと披露され、厳めしい顔からは歴戦の猛者が放つ風格がある。アンリも女性の中では長身な部類だが、この男は優に200pを越えた人間はガリアでもあまり見かけない。
「おっと失礼、俺はガイウス・アザロ軍曹だ。よろしくな」
「私はアンリ・クロウ少尉だ。よろしく」
「今いるのは俺を入れて12人だ。戦車の整備で2人は車庫が、後はキャンプにいるはずだ。俺はメッペルの司令官代理に知らせてくっから、先に挨拶しときな」
「あ、ああ……?」
状況が読み込めないアンリだが、ガイウスが尋ねるよりはやく去ってしまい台詞の意味を聞き損なう。仕方なくキャンプの一画でポーカーをしている一団に近寄る。彼女に気づいた女性兵士は起立し敬礼したが、それ以外の隊員はのっそりと立ち上がる。
「本日から422部隊の隊長を任されたアンリ・クロウだ。貴官はフィオネ・ツェペリか?」
「着任御苦労様です! 本官はフィオネ・ブルークハルト・ツェペリ一等兵であります!」
威勢のいいフィオネの声に次々と隊員が集まる。
真っ先に飛び出したのは金と赤の迷彩模様に髪を染めた若い男性だった。
「おいおい、えらく美人じゃん。クロウのオッサン、愛人を送ってきたのか!? 俺はロッシュ・スコールだ、よろしくな!」
「いいや、油断するなよ兄弟。女に見えて実はおとぐぉっ!?」
「馬鹿なのあんた? 胸のある男なんてあり得ないわよ!! 本の読みすぎなのよこの薄汚いウジブタが!!」
「……ウジなのか、ブタなのか……どっちだ」
「少なくとも、そんなブタは食べたくないですね。お腹壊しそうです」
「ネレイはブヨブヨしてて白いところをかけたんだな。よっ、座蒲団一枚!」
「デブトン……ブフッ。ププッ、クスクス」
最後にはネレイと呼ばれた女性の罵倒で飛び出した不思議な言葉に話題が移り、いつの間にか上品な女性がいた。どういうわけかアンリの顔を見て難しい表情を浮かべている。
「マルギット・マウザー少尉、私の顔に何かついてるのか?」
「あ、いいえ。……昔の知り合いにそっくりだったものですから。失礼しました隊長」
丈の長い自前のスカートを着用したマルギットは礼儀正しく頭を垂れる。そこへネレイにアイアンネイルをキメられていた二枚目が割って入る。流れるプラチナブロンドとサファイアブルーの瞳が高貴な印象を与えるが、実際はそこまで綺麗な性格ではないらしい。
「隊長は知らないだろうけど、姐さんはガリアにいた頃ランシール士官学校を主席で卒業してる。ガリア戦役の時にはぎ
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