第1部 甦る英雄の影
第1章 人狼部隊
ヴェアヴォルフ
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征歴1955年ガリア公国首都ランドグリーズ、ガリア軍司令官室は恐ろしく乱雑な状況だった。何も指揮系統が混乱したり、敵の侵入を許し荒らされたわけではない。
全ての原因はこの部屋の主、ラムゼイ・クロウ少将の怠惰で無気力な性格にある。地方の三流貴族に産まれ、門閥主義の軍で出世を望めない彼なりの反抗である。
司令官室の机に足を投げ出したクロウ少将と、彼の眼前で直立する女性士官、アンリ・クロウ少尉は妙な沈黙を貫いている。その理由を語るには、まず20世紀初頭にまで遡る必要がある。
ラグナイト資源を巡る帝国と連邦の対立と帝国皇太子の暗殺が重なり起きた第一次ヨーロッパ大戦は両国の消耗で休戦となる。帝国の連邦加盟国に対する武力侵攻で勃発した第二次ヨーロッパ大戦は帝国皇太子マクシミリアンの戦死、両国の巨大兵器開発に消費された膨大な物資と資金の浪費による国庫の破綻により休戦。二次大戦のさなかに起きたガリア戦役はガリア侵攻軍司令官マクシミリアンの戦死で講和条約が締結される。その二年後にはガッセナール家主導のクーデター、ガリア内乱で公国は約一年に渡り内戦状態へ陥る。
内乱の際、義勇軍を集められず士官生まで戦場に駆り出されたことは物議を醸し、1942年、第二次ヨーロッパ大戦終決の翌年にラムゼイ・クロウ中佐(当時)が兼ねてから進言していた『軍部から独立した特殊部隊』が設立される。
ガリア戦役において英雄と評される義勇軍第3中隊第7小隊隊長のウェルキン・ギュンターとならぶガリア正規軍422部隊隊長であったクルト・アーヴィングに敬意を表し、名称は『諜報部422部隊』、またの名を『ヴェアヴォルフ』と呼ばれる諜報部所属の遊撃部隊である。
これによりラムゼイ・クロウはより権限の強い少将(ガリア戦役中にクロウが告発、失脚したカール・アイスラーの席である)に就任、かつて『名無しの部隊』と軽蔑された部隊は名を変えてガリアの地に甦ったのだ。
人材確保のため諜報部が行った人材探しは1952年、連邦が帝国の機密事項を強奪したことで開戦となった第三次ヨーロッパ大戦の直前まで続く。
1952年1月中旬、ラグナイト資源の乏しい帝国は三度目のガリア侵攻を開始、ここに第二次ガリア戦役が勃発する。
そして設立から長らく存在を隠蔽され続けた『ヴェアヴォルフ』は、1952年3月某日、ガッセナール城攻略戦でついにその存在を大陸全土に轟かせることとなる。
しかしながら、緒戦は新型兵器である自走臼砲と機動トーチカを擁した帝国の完勝に近く、ガリア正規軍は絶対国防圏であるヴァーゼル橋付近まで退却、義勇軍と合流し徹底抗戦を開始する。
迫り来る帝国軍は占領地での民間人、とりわけダルクス人の虐殺や略奪で知られ、正規軍義勇軍ともにどうにか敵の重戦車小隊を退却させるべく猛攻を仕掛ける
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