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ドン=パスクワーレ
第二幕その七
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第二幕その七

「全て私達に下さるそうで」
「おいおい、それはまた」
「気前がいいっていうか」
「それでですね」
 使用人達の喧騒は続く。その中であの若い使用人がマラテスタを部屋の中に案内してきた。エルネストも一緒である。
 彼は部屋に入りまずはパスクワーレを探した。しかし彼は何処にもいなかった。
「あれっ、何処に行かれたのかな」
「パスクワーレさんが呼んだのだよね」
「はい、そうです」
 使用人はマラテスタの問いに対して答えた。
「それで御呼びしたんですが」
「まあそのうち来るだろうね」
 マラテスタは至って穏やかに使用人に述べたのだった。
「すぐにね」
「左様ですか」
「僕はここで待っているから」
 こう告げてチップのコインを渡したうえで使用人を下がらせた。それは部屋の中にいる他の使用人達に対してもだった。
「暫くこの部屋にはパスクワーレさん以外入れないでね」
「わかりました」
「それでは」
 使用人達は彼の言葉とコインを受けて部屋を後にする。これでエルネストと二人になりその中であらためて彼に対して言うのであった。
「それでですが」
「はい」
「今夜で全てが終わります」
 エルネストに顔を向けて話す。今二人はそれぞれソファーに座りそのうえで向かい合って話すのであった。
「全てがです」
「終わりますか」
「ノリーナさんが密会の手筈を整えておられますので」
「つまり僕がその相手になるというのですね」
「ええ、その通りです」
 まさにそれだというのである。
「おわかりですね」
「ええ、よく」
 こう答えることができたエルネストだった。
「それでしたら」
「では話が早いです」
 マラテスタも彼の言葉を聞いてにんまりと笑う。
「さて、後はパスクワーレさんですが」
「少しやり過ぎにも思えますけれどね」
 またこうしたことを言うエルネストだった。
「ここまでやるのは」
「ですからこれ位でいいのですよ」
 しかしマラテスタもまた言うのであった。
「あの人には。貴方も御存知の筈ですが」
「ええ。子供の頃から」
 両親を早くに失いそのうえで叔父に引き取られて育てられていたのである。だからよく知っているのである。まさに親代わりであったからだ。
「気はいいんですけれどね」
「その分騒動ばかり引き起こす人ですから」
「全く。何をしても騒動になりますから」
「天性のものですね、あれは」
 こうまで言うマラテスタだった。
「あの人は」
「確かに。それでですけれど」
「はい」
「叔父さんは何処に行ったのでしょうか」
 まだ戻らないのでそれで怪訝な顔になるのだった。そのうえで再び部屋を見回すがやはりいない。このことに少し戸惑うエルネストだった。
 それでも少し待っている
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