第5章 契約
第70話 王の墓所
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と、その場に残された砂を彼自身の棺に納めた後の呟き。
但し、この呟きは、俺の傍らでこの玄室に蟠る不浄の気を清める祓いの助手を務めた少女に対する問い掛けなどでは有りません。
これは、自らに対する確認作業。
しかし……。
「あなたが夢の世界で出会った少女が手にしていた頭骨は、彼女自身の父親の頭骨と考えて問題ない」
しかし、俺の独り言に等しい呟きに対して、彼女は、彼女に相応しい抑揚のない小さな……、傍に居る俺にしか聞こえないような小さな声でそう答えた。
そして、
「無念の内に死亡した高貴なる人間。魔力を持つ人間の頭がい骨を使用した外法は確かに存在する」
……と、更に続けたのでした。
そう。そして、その類の呪詛は俺も知って居る上に、未だ完全に終息していない疫病騒動の際に嫌と言うほど、その手の呪法の恐ろしさを思い知らされたトコロでも有りますから。
如何に強固な結界の内側に身を置いたとしても、それ以上に強力な因果の糸。血を分けた家族の絆の前には無意味だと言う事を。
ただ……。
「そうだとすると、九月に起きた軍事物資横流し疑惑に始まる、ガリア両用艦隊のクーデター。そして、十月の疫病騒動まで、すべてが一連の流れの中で起きた事件と言う事になる」
まして、それだけでは事は納まらないはずです。
何故ならば、このオルレアン公の墓所は、俺と湖の乙女が侵入するまでに荒らされた形跡はおろか、何者かが侵入した形跡すら見つける事は出来ませんでした。
確かに、細かく調査を行った訳では無いので正確な情報と言う訳では有りませんが、おそらく、オルレアン大公は、この墓所に葬られた段階では既に首を失った後。更に、体現する悪意イゴーロナクに憑かれた状態で葬られたのは間違いないでしょう。
但し、イゴーロナクに憑かれたのは、おそらくは死後。
イゴーロナクに完全に憑かれた人間は、間違いなく人間的な意味での死を超越した存在と化しますから、如何なる方法でも暗殺する事は不可能。
身体が存在する限り、殺す事は難しいでしょう。
おそらく、グラーキの黙示録を読まされ、彼の身が完全にイゴーロナクに乗っ取られる前に、暗殺されるような状況に陥ったと考える方が無難ですか。
そして、その時は人間で有ったが故に死亡した。
しかし、既に契約は為された後で有ったが故に……。
「どちらにしても、オルレアン大公の埋葬に関わった人物たち。アンリ・ダラミツの例から考えるとブリミル教の関係者に、今回の一連の流れを画策した人間が居る可能性が高いと言う事か」
かなり、疲れた雰囲気でそう呟く俺。その理由は、この状況は明らかに後手に回っている状況ですから。
このままでは、誰か判らない相手に好
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