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蒼き夢の果てに
第5章 契約
第70話 王の墓所
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がすべてを薙ぎ払う!

 しかし!

 その攻撃を予測したかのような動きで石棺の蓋を投げつける事に因って、表皮一枚を犠牲としただけで無効化する首なしの魔物。
 このレベルの瘴気を放つ相手では、表皮一枚程度切り裂いただけでは無傷に等しい。

「おう、これは美味そうな子供たちよ」

 切り裂かれた表皮から鉄臭い紅き血潮を吹き出しながら、軽やかに玄室の床へと降り立つ首なしの魔物。その姿は悪夢そのもの。
 いや、首なしの魔物と呼称していますが、コイツの正体を俺は知って居ます。

 但し――――

「残念ながら、俺はオマエの名前を無暗に口にしたりはしないぞ」

 手にした宝刀を青眼に構えながら、かなり余裕を持った台詞を口にする俺。
 その瞬間に、両足をしっかりと玄室の床を踏みしめ、僅かにすり足を行い利き足の右に体重を乗せる。

 そう。俺はコイツの正体に関しては知って居ます。

 首のない白く光るような身体。死亡してから既に三年以上の時間が経っているはずの身体から、未だ凝固していない血液が滴り落ちる状態。
 そして、ヤツはワザと俺にヤツの名前を呼ばせる為に、俺が否定せざるを得ない名前を名乗った可能性が有る事も理解しています。

 その瞬間、手の届く間合いに無かったはずの首なしの魔物が、一瞬の内に間合いを詰めて湖の乙女に掴み掛かる!
 そう。その動きは正に神速。普通の人間に為せるスピードではない。
 この速度で動ける事こそ、ヤツや、そして俺が精霊を従える存在で有る事の証。

 しかし! そう、しかし!

 完全に湖の乙女を捕らえ、そして、ヤツの両手に存在する濡れた巨大な口が、彼女の柔肌に醜い、ヤツに相応しい傷痕を残そうとした正にその瞬間!

 此の世成らざる絶叫が、地下の玄室に響いた。

 首のない魔物が完全に彼女を拘束したかに見えた正にその刹那、彼女と、そして彼女を捕らえようとした、その醜い両手の間に浮かぶ防御用の魔術回路。
 その瞬間、自らの手に開いた凶悪な口に因って食いちぎられるヤツ――首のない魔物の両腕!

 そう。これは俺たちに施された一回だけ、すべての物理的な攻撃を反射して仕舞うと言う仙術に因る効果。そしてその事に因り、ヤツの口により付けられた傷は絶対に自然に回復する事はない、と伝説により伝えられている禍々しい口にて、自らの両腕を食いちぎると言う結果を作り出したのだ!

 首のない、そして、両腕すらも失った魔物が、今度はヤツに非常に相応しい姿で、猛然と玄室の出入り口へと走った。
 但し、ヤツのこの反応は予想の範囲内。
 何故ならば、この口の存在する両腕を失った以上、この場でのヤツの勝利は有り得ない状況と成りましたから。まして外に出さえすれば、ヤツが目を覚ましたと言う事は、ヤツ以
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