第5章 契約
第70話 王の墓所
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「そのように畏まって居ては、顔の確認も出来ないであろうが」
そう、頭の上から声を掛けて来るジョゼフ王。
う〜む。こう言う場合は……。
「いえ、私のような平民出の人間が、直接、お声を賜るような栄誉を得られるだけでも十分で御座います陛下。まして、私の顔など、御目汚しにしか成りませぬ故、御容赦頂きたく思います」
一応、一度は謙ってそう答える俺。確かこう言う場合は、一度は固辞して置くのが作法だったと思うのですが……。
違ったかな。
しかし、
何か、軽く鼻で笑われたような雰囲気が、目の前の男。おそらく、聖賢王と呼ばれるジョゼフから発せられる。
そうして、
「イザベラから聞いている。どうせ面倒だから、そうやって礼儀正しく振る舞って、儂を煙に巻こうとしているのであろうが、そんな事は無駄だ」
……と、俺の人間性を読み切った台詞を、先ほどまでと少し違う口調で頭を垂れた俺に対して投げ掛けられた。
成るほど、いくら逃げようとしても逃げ切れないと言う事ですか。
諦めた俺がゆっくりと立ち上がる。
どうせ、性根が知られて居るのなら、今更、表面上だけを取り繕っても仕方がないですから。
「御尊顔を拝し奉り恐悦至極に御座います、陛下。私はオルレアン家次期当主。シャルロット姫さまの使い魔として異界から召喚された龍種。名前を武神忍と申します。以後、お見知り置き下さい」
立ち上がった後、それでも騎士風の礼を行い、軽い自己紹介を行う俺。それに、俺の性根を知って居るのなら、今更普通の人間の振りをする必要もないので、龍で有ると言う部分も明かして置く。
どうせ、言わなくても知って居るのでしょうけどね。
そんな俺を一瞥した、目の前に立つ壮年の男性。
「ふむ。多少、見た目を弄る必要が有るようじゃな」
身長は俺よりも五センチ以上は高いように見えますから、一八〇センチ代後半ぐらいと言うトコロですか。胸板も厚く、貴族や王と言うよりは何処かの国の軍人と言う雰囲気。
顔の造作は、流石にタバサと同じ血族。蒼い髪の毛や髭が男性としては多少、違和感が有るような気もしますが、それでも、男性としても非常に整った顔立ちと言うべきですか。
タバサの父親の兄、……と言うトコロから考えると、年齢は四十歳前後。その割に若いように見えるのは、おそらく彼の血の為せる技なのでしょう。
いや。彼の場合も、髭が年齢を高く見せて居るだけで、あの髭をすべて剃り落せば、年齢不詳の青年貴族が目の前に現れる可能性が大ですか。
但し……。
「私に何をさせる心算です、陛下」
先ほどのジョゼフの台詞や、その他の要因から、何となく嫌な予感がしていたのですが、そんな事はオクビにも出す事もなく、そうジョゼフに
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