第一幕その七
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ゲーネはいぶかしむ顔でそのイゾルデに問い返した。
「何を仰っているのですか?」
「私が飲んだのは苦しみのない湖の中へ向かう妙薬の筈」
イゾルデは己が仕込んでいた魔術の薬のことについて考えた。
「けれど。どうして」
「まさか。その妙薬とは」
ブランゲーネは恐る恐るその薬について考えた。
「死への誘いのものではなく愛への」
「トリスタン・・・・・・」
もう薬のことは考えられずトリスタンをじっと見詰めた。
「私は」
「イゾルデ・・・・・・」
そしてそれはトリスタンも同じだった。彼もまた熱い目でイゾルデを見て離れない。
「私もまた」
「私は生きなければならないの?」
今にもトリスタンに倒れかからんばかりに語る。
「このまま苦しい光の中で」
「企みの喜び」
トリスタンもイゾルデを今にも抱き締めんばかりになっていた。
「欺瞞の生んだ幸いよ」
「万歳!万歳!」
「コーンウォール万歳!
熱く、それでいで苦しく辛い目で互いを見る二人。しかし今船はコーンウォールに着いたのだった。光が二人を迎えるが彼等はその光を忌々しげに見るのだった。
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