DICTIONARY
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辞典と少年
200年前、小さな村から一冊の本が盗まれた。
盗んだ人間は、誰にも気づかれぬまま村を抜け出し、林を駆け、森を抜け、川を越え、隣町の方へと走った。
盗んだ本には、黄金の文字が記されており小さく『DICTIONARY』とみえた。
本を盗んだのはフードを被る小さな幼い少年だった。
手のひらより大きく少年が運ぶには大きすぎた、だが少年にとっては今この本が明日を生きるために必要なものだった。
売ればお金になる、そうすれば明日の食事に困らない…、そう思いながら全力で野山を駆け抜けた。
少年は町に着いた。
どれだけ走ったのか…、そんなことなど気にせずそのまま走り続け町の門を抜けた。
少年は、小さなお店の前に立っていた。そこには『鑑定屋』と看板に書いてある、その下には小さい字で『盗んだものは買取らない』と記されていた。
少年はゆっくりと深呼吸をした。
「はぁ…、はぁ……」
息を整えできるだけ平常心を保った。
店のドアに手を掛けた。小さな力で木製の扉を少しずつ開けた。
開いた扉の奥にはいろいろな商品が置いてあった。小さい置物から見たこともない金属の光る装飾品。
少年が周りに視線を動かしていると、
「おやおや、小さいお客様だねぇ……」
突如聞こえた声に少年は驚いた。左に視線に移し首をゆっくり動かした。
「小さいお客さんの割りに気が強そうな目だ……」
言ったのはお爺さんだった。
少年の体より大きく頬はふっくらして、しわが顔をなぞり白いひげが特徴的だった。声は低く、だがはっきりと聞きとれた。
身長は少年の2倍以上はあっただろう。
「やぁ、今日はどんな御用かな?ふむ……、また持ってきたのかい?」といった。
また…っと、お爺さんは前にも同じことがあったかのように話した。
少年は言った。
「き…今日は、これを買って欲しい……」
そう言いながら本を店のカウンターに置いた。
「ふぅ……」
お爺さんはため息を少しついた。
「今度は何を持ってきたのかねぇ……ぬぅ…?『辞典』か…」
少年が言う。
「こ、これは…ぼ、僕の家にあったものだ!だ…だから、買取ってもらえるはずだ!買ってくれよ」
少年は強く主張した、隣村から盗んだものだとバレたくないからだ。
『盗んだものは買取らない』このお店の看板にはそう書いてあった。それがバレたら買取ってもらえないためだ。
「ふぅ……、分かっておるわい、少し落ち着かんかい」
お爺さんは分かっていた。小さな少年が泥だらけになってまで、きれいな『辞典』など持ってこないことを…だがお爺さんは何も言わず本を受け取り中を開いた。
「むむぅ…」
といってお爺さんは鑑定を始めた。
少年は少し疲れていた。
お爺
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