第百三十三話 小豆袋その十二
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そのことを話してそうしてなのだった。
「織田信長、ここで逃がしては厄介じゃな」
「うむ、手を打っておくか」
「そうじゃな、あ奴を都に辿り着くまでにな」
「仕掛けておくか」
「危うくなるわ」
「ここはな」
こう話してそうしてだった、彼等は。
「では松永に話をするか」
「そうじゃな、丁度いい具合にあ奴は今織田家の軍勢の中におる」
「あ奴に吹き矢でも使わせて始末させるか」
「織田信長といえど今後ろから吹き矢なりに撃たれては避けられまい」
「ではここはな」
「仕掛けるか」
こう話してそのうえでだった。
中央の者が松永に念を送った、だがそれでもだった。
反応はなかった、彼はこのことに苦い顔になり言った。
「駄目じゃ、念を断っておるわ」
「何と、断っていますか」
「そうしていますか」
「うむ、そうしておる」
苦い顔で言っていく。
「近頃いつもそうしておるがな」
「あ奴、何を考えておるのでしょうか」
「ここに来ることもなくなりましたし」
「織田家の家臣として生きていますが」
「これまでのことを天下の誰もが知っている筈なのに」
松永の悪評はそれこそ知らぬ者はいない、その織田家の中にしても彼を隙あらばと考えている者ばかりだ。
だがそれでも松永は織田家の中にいるのだ、これも彼等にはわからないことだった。
しかし松永は使えない、それではだった。
「やはりここはじゃな」
「杉谷、いいか」
「手筈通りな」
「うむ、わかった」
あの杉谷も闇の中にいや。その彼が言うのである。
「それではな」
「頼むぞ」
「都に着くまでの間にな」
「すぐに近江の西に向かうわ」
杉谷はその闇の中で鋭い声になって述べた。
「朽木谷辺りか」
「そこに向かうか」
「そして仕掛けるか」
「そうするとしよう、ただしじゃ」
「ただし?」
「ただしというと」
「そこでしくじってもじゃ」
万が一そうなってしまってもだというのだ。この辺りは慎重に慎重を期す性格であるらしい。それが言葉に出ていた。
「よい様に備えはしておくわ」
「また仕掛けるのじゃな」
「そうするな」
「そうじゃ、わしが撃つ」
杉谷の言葉である。
「だから安心せよ」
「うむ、鉄砲なら御主じゃからな」
「ここは任せる」
「それこそ陰陽道の者でもなければ御主は防げぬ」
「だからいけるな」
「ここでしくじっても」
他の者達も彼がいざという時にいることに安心していた、彼等は打つべき手を全て用意していた、そのうえでだった。
「さて、後詰がおるがな」
「あの猿顔の者じゃな」
「あの者近頃よく見るが」
「中々要領のよい奴の様じゃ」
「機転が効くのう」
このことが話される、羽柴のそうしたところは見られていた。
だが
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