第百三十三話 小豆袋その九
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「もう気付いておられじゃ」
「まさか、もうですか」
「お気付きだと」
「そうじゃ、退いておられるやもな」
「我等は今兵を挙げたところですが」
「それでもですか」
「うむ、既に金ヶ崎を引き払っておられるやもな」
そこまで速いというのだ、信長の動きは。
「そして織田家の軍勢もな
「もう退きにかかっていると」
「そうだというのですか」
「本来はこの夜も進みじゃ」
そしてだというのだ。
「都に戻る道を塞いでから挟み撃ちにしたいが」
「しかし兵が疲れ過ぎております」
「ここで夜を徹して兵を進めても」
「わかっておる、疲れた兵は何にもならぬ」
長政もそれはわかっていた、それで言うのだ。
「ここはな」
「ですな、それでは」
「仕方ありませぬ」
家臣達も本来は言いたくなかったが言わざるを得なかった、この辺りが難しいところだった。
浅井家の軍勢は朝まで休んだ、それは織田家の軍勢も同じではあった。
だがそれでもだ、彼等は朝起きるとすぐに立ち上がり急いで飯を食い歩きだす、そのうえで都をただひたすら目指す。
それは諸将も同じだ、佐久間重盛こと大学は兵達を都に急がせる、その指揮は普段とは違うものになっていた。
「急げ!そして列から離れるな!」
「遅れれば敵に追いつかれるぞ!」
「はぐれたら野盗の餌食ぞ!」
こう叫び彼等を急がせる、その彼にだ。
大津と野々村が来た、そのうえで彼に言うのだ。
「大学殿、この度は」
「かなり焦っておられませぬか?」
「焦っているつもりはないがな」
だがそれでもだと、重盛も返す。
「しかし今はじゃ」
「兵を急がせてですか」
「はぐれることも許さず」
「退きは退きでも今の退きは違う」
それも全くだというのだ。
「十万を超える軍の退きぞ、しかも敵が迫っておる」
「それ故にですな」
「確かに今は」
二人にしてもそれはわかっている、実際に彼等も焦っている。
そのうえで都に向かっている、二人も無意識のうちに兵達に言う。
「羽柴殿が止めておられる間に都に行くぞ!」
「今のうちにな!」
「はぐれれば死ぬと思え!」
「とにかく都に向かえ!」
こう叫ぶ、普段は冷静な彼等でもだ。
そうして進みそのうえでだった、彼等もまた。
昼前に馬に乗ったまま干し飯を慌てて食う、それにかんぴょうをかじって飯を済ませた。
重盛も同じだ、彼も慌ただしく食ってから言うのだ。
「とりあえずわしが見ている者達は誰もはぐれてはおらんがな」
「はい、何とか越前を出ました」
「このまま琵琶湖の西に回ればですな」
「後はひたすら都に向かうだけじゃ」
越前と近江の境を超えてそこから近江の西を都に向けて上がる、その西のtごころに入ればだというのだ。
「後は猿が防いで
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