第三十六話 美術館にその十二
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「そこに来た者に遅い掛かる、自殺の名所にいることも多い」
「崖とか踏切とか」
「そうした場所ですよね」
「自殺をした者は怨念を抱いて死ぬからな」
そこに独善が加わればどうなるか、日下部はこのことも知っていた。
「軍でもよくあった、自衛隊でもな」
「そういう自分勝手な奴が自殺してですか」
「それでなんですか」
「自殺自体がままにしてな」
あるというのだ、軍や自衛隊においてはそうしたことが他の世界より多い傾向があるだろうか。そして自殺した者がだというのだ。
「怨念を抱いて死ぬとだ」
「地縛霊になるんですね」
「船でもよくあった」
軍の艦艇のことだ。
「霊が出るということはな」
「やっぱりあるんですか」
「そうだ、ある」
実際にだというのだ。
「船の中でも霊が出ることも多い」
「じゃあ大和とか武蔵もですか?」
「そうした話が」
「その船達にそうした話があったことは聞かないが」
それでもだというのだ。
「そうした話があることもな」
「あるんですね」
「船の地縛霊も」
「ある、この学園ではそうした者はいないがな」
だが学園の外は違う、そうだというのだ。
「外にはいる」
「そしてそうした連中の近くにはですね」
「絶対に近寄るべきじゃないですね」
「地縛霊がいるという場所には近寄らないことだ」
「絶対にですね」
「その方がいいんですね」
「そうだ、出来る限りな」
それが賢明だというのだ、そうした話もした。
美術館の中に入ると実に様々な芸術品が展示されていた、絵画もあれば彫刻や銅像もある。そして書もあった。
その書を見てだ、日下部は二人に言った。
「これは欧陽詢の筆だ」
「欧陽詢って確か」
「唐代初期の政治家であり書家だ」
見れば端正な字だ、日下部はケースの中に展示されているその書を二人と共に見ながらそのうえで語る。
「今も名を知られている」
「凄い人の書がありますね」
聖花は難しい顔で述べた。
「こんな人の書もあるなんて」
「他にもある」
日下部はその聖花に応えながら話す。
「王羲之もな」
「王羲之もあるんですか」
「日本の書家のものもある」
中国だけではないというのだ。
「書だけでもな」
「そうなんですか」
「絵もある」
日下部は二人を書から別の場所に案内していく、そうしながらその二人に話すのだった。
「その絵だがな」
「そこに、ですよね」
愛実が言う。
「泉があるんですね」
「そして十二時になればな」
「はい、絵から出て来るんですね」
「そうだ、何かと出て来る」
「もうすぐですね」
愛実もここで腕時計を観る、その時間がだった。
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