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トリスタンとイゾルデ
第三幕その七
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第三幕その七

「行かれました」
「何故だ・・・・・・」 
 王はその言葉を聞いて絶望そのものの声をあげた。
「何故だ・・・・・・トリスタンよ」
「トリスタン様」
 クルヴェナールはトリスタンの亡骸に顔を向けた。王もそれと共にトリスタンの亡骸を見てしまった。その顔がさらに沈痛なものになる。
「私も今から夜の世界へ」
「死んだか」 
 王はクルヴェナールの死を見届けて呟いた。
「誰もが。全てが死ぬ。トリスタン、今日もまた私を裏切るのか」
 両目から涙を流していた。
「信頼する友、我が甥よ。そなたに無二の誠意を示そうと思いここに来たというのに。そなたは目覚めず我が悲しみを置いたままにするのか」
 こうトリスタンの亡骸に告げる。
「不実にしてこの上なく忠実なる友よ」
「王よ」
 ここでブランゲーネが王に告げてきた。
「どうした?」
「イゾルデ様が」
 今その手の中に抱いているイゾルデを見ての言葉だった。
「気を取り戻されました。今」
「そうか」
「御気を確かに」
 ブランゲーネは目を開きだすイゾルデに対して告げた。
「私はいつもここにいますから」
「私はそなたとトリスタンを赦そうと思っていた」
 王はブランゲーネの手の中から離れゆっくりと、幽玄に立ち上がるイゾルデに対して告げてきた。
「二人の愛の深さを知り。メーロトにも命じてここまで来たのだが。それは適わなかった」
「適わなかった?」
「トリスタンは死んだ」
 王は沈痛な声でイゾルデに告げた。
「そこに。静かに眠っている」
 トリスタンの亡骸をこのうえなく悲しい目で見ている。
「最早。目覚めることはない」
「いえ」
 だがイゾルデはここで言った。
「それは違います」
「違うだと?」
「イゾルデ様、それは一体」
「彼は目を開けているのよ」
 トリスタンに顔を向けて。静かに微笑んで告げた。そのうえで彼にゆっくりと歩み寄りつつ。その言葉をさらに続けるのだった。
「穏やかに、静かに。彼は微笑んでその目を優しく開いているわ。それが見えないのかしら」
「イゾルデ・・・・・・」
「まさか・・・・・・」
「夜の闇は広がりそこにあるのは星の光」
 恍惚として語りトリスタンにさらに近付いていく。
「その光は次第に明るさを増し夜の中に輝いていて。この人はその中で微笑んでいるのよ。その心は豊かで気高く唇からは陶然と柔らかく快い息が溢れ出ていて」
 遂にトリスタンの側まで来た。ゆっくりと腰を下ろす。まるでこの世のものではないような動きで。
「私は感じるわ。この方の全てを」
 そのままトリスタンを抱き寄せる。白い服の中に黒いトリスタンを。
「静かに歓びを訴え全てを語りつつ」
 そのうえでさらに言葉を続ける。
「優しく慰めるようにこの人
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