十一日目 十二月一日(木)後編
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あれだけの悪逆を見ると胸糞が悪くなる」
「ええ、でもかなりの強敵が居ると解ったのは、確かな収穫だわ」
セイバーが武装を解除し、制服姿に戻る。美也がライダーに呼びかけ、戦車に騎乗した。
「……美也、お前はそれで帰るのか?」
「そうだよ。なんたって、にぃにとみゃーは敵同士なんだから。あーお腹空いた」
(どうせ、帰るところは一緒だろ)
にしししし、と美也がはにかみ、赤髪の大男に号令を出した。猛牛の戦車が、夜の帳が降り始めた空を速やかに駆け抜けて行った。
「さて、私達も帰ろうか。……ランちゃん? どうかしたの?」
見ると、ランサーが難しそうな顔をしていた。何か考え事をしていたようにも見える。
「……やはりどう考えても思い違いだ。マスター、敵讐がありましたら現れます故」
はるかの声に、我に帰ったランサーは、はるかを一度だけ見た後、無愛想な様子で姿を消した。
「もう、ランちゃんたら、いけずなんだから。照れてるのかな」
はるかが、ふふっと笑う。
「……先輩、帰りましょう。もう夜ですし、送りますよ」
純一は、むっとしていたので、つい口調がぶっきらぼうになってしまった。
「あれ、どうして怒ってるのかな? やきもち〜?」
「ち、ちがいますよっ」
はるかが、ぷぷっと吹き出し、からからと明るく笑う。
「ほんと君ってば、面白いねー。冗談よ。……ありがと。せっかくだから、お願いしようかな。……今日はちょっと、疲れちゃった」
はるかが純一の腕を取り、寄りかかるように身を寄せて来た。純一の胸の奥が、どうしようも無いくらい、バクバク鳴り出した。
「……橘君って結構がっちりしてるんだね。ちょっと男らしくてかっこいいかも」
はるかの頬が赤いように見えるのは、黄昏の所為か、はたまたそれとも。
「えっと、先輩。この態勢で、帰るんですか?」
「駄目かな?」
「こ、こういうのは、あの、その、カップルじゃないと。誰かに見られたら、あの誤解されちゃいますし……」
「君は、誤解されたら嫌?」
「そ、そんなことありませんっ。むしろ嬉しいくらいです!」
女神が、にこっと笑う。はるかの笑顔は、闇が深まりつつある中でも、辺りを明るくしてくれるように、純一は感じた。
「……ねぇ、あたしの事、完全に忘れてるわよね」
純一とはるかが悲鳴を上げる。恥ずかしさからか、ぱっと離れる二人。声のした方を向けば、腕を組んで不機嫌そうにしているセイバーが居た。
「別に、あなたが誰と仲良くしようが構わないけど、その子は敵なのよ? あまりイチャイチャしないでもらえるかしら」
「べ、別にイチャイチャなんて」
「もぉ、セイバーちゃんのいじわるぅ。ひびきみたいなんだから」
セイバーが、ぎょっとしたような顔になる。
「セ、セイバーちゃん? ……その呼び方、止めて
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