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アマガミフェイト・ZERO
十一日目 十二月一日(木)後編
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気を出し、暗殺者のような黒い衣服を着ている。
「まだ戦いは始まったばかり。もう少し慎重に事を運んで下さらなくては」
 ウェイバーの顔が引きつる。
現れたのは、前回の聖杯戦争で死んだ筈の久宇舞弥だった。しかし生前の彼女は、暗殺技術に長けていたとはいえ、所詮普通の人間だった。だが今の彼女はどうだろう。顔には不気味な紋様が無数に刻まれ、まるで影の化身のように見えた。
「それに、マダムがあなたを呼んでおられます」
 ウェイバーは、舞弥が何かを押しているのに気が付いた。それは彼女が押すにはあまりに似合わぬもの。車椅子だ。その椅子には、髪の長いすらりとした美女が座っていた。
「ウェイバー……くん。どこ……? 一緒、に帰ろ……、帰ろ……」
 ウェイバーの表情が一変した。感極まったような表情で、彼女の下へ馳せ参じ、膝を折った。頭を垂れて恭順の意を示す。
「ああ、我が女神、アイリスフィール様。僕はここです。ええ、帰ります。帰りますとも」
「にぃに、あの人、なんか怖い……」
 美也が顔を強張らせ、純一の背後に隠れる。純一も、しがみつく美也の手をしっかり握りしめた。それは、美也は励ます為だけではなく、己の恐怖を耐える為でもあった。
「なんでだろう、二人とも凄く綺麗な人なのに、全然人間には見えない……」
「わたしも怖いわぁ。黒い人なんか、ひびきみたいな顔してるし。白い人は、なんだか幽霊みたい。美人なのに、もったいないな」
 少し不安そうな顔した森島はるかも、純一にそっとしがみついた。綺麗で健康的な色をした手が、純一の制服をぎゅっと握り閉める。
(先輩……、さすがに塚原先輩に失礼だと思います。ってそんなこと考えてる場合かっ)
 純一は、恐怖のあまり自分の頭が少し変になったのかと思った。
 夕日の下で、車椅子に乗るアイリスフィールは、開花期を迎えた白い桜のように妖しく咲き誇っていた。美しい銀色の髪が、夕焼けでキラキラと明滅している。肌は、白蝋のように真白だ。でも青ざめていて、どこか不安を感じさせる色。そして身に纏うのは金の刺繍が入った見目麗しい純白のドレス。彼女の容貌は、女神と称しても言い過ぎでは無かった。でも、同じ女神でも、森島はるかと彼女はまったく異なる存在だった。虚ろな瞳に、表情の乏しい顔。喋る言葉もどこか上の空。影の化身に車椅子を押されるアイリスフィールは、女神と言っても死の女神だった。
 ウェイバーが立ち上がり、憎々しげにこちらを見た。
「バーサーカー、戻るぞ。お前達、次は覚悟しておけ。必ず、潰す」
赤いサーヴァントの足元に闇の穴が開き、現れた時と同じようにバーサーカーは去って行った。そしてウェイバーと久宇舞弥達もまた、一陣の黒い風が吹いたと思ったら、跡形も無く消えていた。

「今日のところは、これで仕舞いにしようや。さすがの余も、
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