第三幕その二
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第三幕その二
「私は夜の国にいる者。私は最初にいた世界に戻っただけ。そこで見たものは」
「見たものは?」
「世界の夜の遠い国」
トリスタンは言った。
「そこで知ることのできる唯一のことは神の如き永遠の忘却」
「忘却!?」
「そのおぼろげなものさえも消えてしまったのか」
言いながら窓の方に顔を向けていた。そこにあるのは昼の世界だった。
「昼の世界の光は私を歓喜から絶望へと追いやる。イゾルデがいないこの世界にいて何になるというのだ」
「トリスタン様・・・・・・」
「会いたいというこの願いもきしみながら背後で死の扉が不気味な音と共に閉じられるのか。昼の光が今私に襲い掛かり何もかも奪おうとする」
「昼が・・・・・・」
「彼女のいる夜を消し去りそのうえで私を絶望に追いやる。この光を永遠に消しあの人の下に行くことこそが私の心から願いだというのに。この世は忌まわしい光で満ちている」
「しかしです」
クルヴェナールは静かに嘆く主に声をかけてきた。
「トリスタン様」
「うん」
「私はイゾルデ様に文を送らせて頂きました」
「文を?」
「左様です」
まずこう告げるのだった。
「是非こちらに来られるよう」
「イゾルデがここに」
トリスタンの目の光が僅かだが強くなった。
「来るというのか」
「そうお返事を頂きました」
「まだ夜は去ってはいなかった」
トリスタンは彼の言葉を聞いて言った。
「イゾルデが夜の中から私を呼んでいる」
「ですから希望を」
すかさず主に希望を持つように告げる。
「貴方様は今まで眠っておられましたが私はそれを治す方法も考え付きました」
「それは一体」
「あの方です」
「イゾルデが?」
「そうです、あの方の妙薬です」
それだというのである。
「あの方が来られれば。ですから」
「そうか。有り難う」
トリスタンはイゾルデに礼を述べてからまた言うのだった。
「イゾルデが来る。あのイゾルデが」
「はい」
「クルヴェナール」
そのうえでクルヴェナールにも顔を向けて声をかけた。
「いつも私の為に尽くしてくれるんだね」
「それが私の役目ですから」
「父も母もいない私を育ててくれて」
彼はクルヴェナールに育てられたのだ。まさに彼にとってクルヴェナールは父であり母でもある。それだけかけがえのない存在なのだ。
「我が盾となり剣となり戦ってくれて。私が憎んだ相手は憎み愛した相手は愛してくれたな」
「それは貴方だからです」
「私だから?」
「トリスタン様ですから」
だからだというのだ。
「私は」
「王にお仕えしている時にはそなたも仕えてくれた」
主が仕えているからである。
「あの方を裏切ってしまった私にも仕えてくれてそのうえでここまで」
「それ
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