暁 〜小説投稿サイト〜
とあるβテスター、奮闘する
裏通りの鍛冶師
とあるβテスター、手を握る
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あの時は、たまたまそれが槍玉に挙げられちゃっただけ。だってユノくん、今は誰も傷つけてないもん」
「で、でも……」
「ユノくんが思ってるほど、周りはユノくんのことを人殺しだなんて思ってないよ。みんな、薄々わかってきてると思う」
確かに僕は正式サービスが始まってから、プレイヤーを攻撃したことは───人を殺したことは、一度もない。
あの件に関して、キバオウや一部のプレイヤーたちからは敵意を向けられるものの、他のプレイヤーたちからあれこれ咎められるようなこともない。
だけど……それで許されるだなんて、思っていいのだろうか。

あの時、僕がやったことは、間違いなく全プレイヤーに対する敵対行為だ。
アバターが消滅すれば現実世界でも死ぬというこの世界で、仮初いえども他者に殺意を向けた。
その瞬間、僕はこの世界を、現実世界の僕としてではなく《投刃のユノ》として生きていくことを決めた。
かつてのSAOの世界で、レアアイテムに目が眩み、パーティメンバーを皆殺しにして逃げ出した───そんな、仲間殺しのオレンジとして。
殺人鬼と呼ばれることも、見ず知らずの相手から敵意を向けられることも構わない。
それら全てを受け入れた上で、この子を守ると決めたんだ───

「あの時ユノくんがしたこと、やり方はちょっと乱暴だったかもしれないけど、間違ってるとは思わない。守ってくれるって言ってくれたのもうれしいし、わたしもユノくんのことを信じてるよ。でもね───」
僕の目を真っ直ぐに見ながら、シェイリは言う。
いつかのように、硬く、真面目な雰囲気を纏いながら。
僕は……目を、逸らしてしまう。
僕を真っ直ぐに見つめる女の子と───シェイリと、目を合わせられない。
いつもなら、簡単にできることなのに。

「これから関わろうとする人まで遠ざけるのは、ちょっと違うと思うな。《投刃》だから、元オレンジだから誰とも仲良くしちゃいけないだなんて、そんなのおかしいよ」
「だ、だけど!僕と関わったら──」
「ユノくん」
無駄だとわかっていながら。
彼女の言っていることが間違っていないとわかっていながらも、無駄な抵抗をしようとした僕の言葉を。
他でもないシェイリの声が、遮った。

「……僕に関わったら、みんなまで敵意を向けられる。みんなまで、辛い思いをする」
それでも僕は、無駄な抵抗を続ける。
目を逸らしたまま、僕は言う。
……だけど、違う。
キリトが、アスナが、エギルが。僕のしたことをあの場で見ていて、それでも尚、友好的な関係を築こうとしてくれている彼らが。
『おまえと一緒にいると、こっちまで辛い思いをする』だなんて、いつ、一言でもそんなことを言った?

「クラインだって、本当のことを知ればきっと後悔する。僕みたいな奴と関わらなければよかったって──
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