暁 〜小説投稿サイト〜
とあるβテスター、奮闘する
裏通りの鍛冶師
とあるβテスター、手を握る
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…」
正直に言おう。ドン引きだった。
というか……ひょっとしてこの人、死線を潜る度にこうして自分の世界に浸ってるんだろうか。
それは流石に、ちょっと……。

「……ほ、ほら、行こうかシェイリ。落ち着いた頃にまた来よう、ね?」
「はーい」
……ま、まあ、安心した途端に感極まっちゃうことって誰にでもあるよね、うん。
24歳の男が妹の名前を呼びながら泣きじゃくる姿はちょっと……いや結構気持ち悪いけれど、それだけ彼は妹想いってことだよね!
なんだか言葉の端々に危険な匂いを感じるけれど、それも彼が妹想いだからこそと思えば目を瞑れ───

「だからリオ、帰ったら結婚してくれ……!」
「それはやめろ!」
───なかった。
訂正しよう。この男は危険だ!


────────────


「……はぁ。リリアってシスコンっぽいなとは思ったけど、まさかあそこまでとは……」
自分の世界に引き籠もってしまったリリアを路地裏に放置(一応待ち合わせ時間の指定はしたけれど、どうせ聞いていないだろう)し、僕とシェイリはひとまず宿屋への道を歩き始めた。

ラムダの裏通りは相変わらず閑散としていて、いつまたあのゴロツキたちが現れてもおかしくはなさそうだ。
もっとも、わざわざ僕が一人になるのを待っていたことから鑑みるに、二人以上のプレイヤーを積極的に襲うつもりはないみたいだったけれど。
そんなことを考えながら、二人並んで裏通りを歩いていく。

「りっちゃんはりーちゃんのことがだいすきなんだねー」
「……りーちゃんって、リリアの妹さんのこと?」
「そうだよー?りおだから、りーちゃん!」
静まり返った裏通りに、シェイリのソプラノトーンの声がよく響く。
いつの間にやら、彼女の中ではリリアの妹さんにまで渾名がついていたらしい。
リリアがりっちゃん、妹さんがりーちゃん。ややこしくない?

「りっちゃんはあんなに頑張ってるんだもん、きっとりーちゃんに会えるよね?」
なんだか見てはいけないものを見てしまった気がしてゲンナリしている僕に対して、シェイリはやっぱりマイペースというか、楽しそうというか。
そんなところが羨ましくもあるんだけどね。

「ん、そだね。このゲームがクリアされれば、リリアは───いや。僕とシェイリだって、向こうで待ってる人に会えるはずだよ」
「……、そうだよね〜」
ん?
何か今、シェイリの様子がおかしかったような───

「ねぇねぇユノくん。クラインくん、いい人だったね」
「……え、あ、ああ。そうだね、いい人だった」
……いつものシェイリ、だよね?
気のせい───だったんだろうか。

「命の恩人だってこともあるけど……それよりも、ああやって誰とでも仲良くなれる人は羨ましいかな。僕、こんな性格だからさ
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