裏通りの鍛冶師
とあるβテスター、手を握る
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のが余計に悲しくなってくる。
「そんなわけで、おめぇさん達は早く戻ったほうがいいと思うぜ。ここもいつ敵が湧いてくるかわかんねぇしよ」
「……、そうするよ」
本当なら、今度は僕たちが彼らの手伝いをするべきなのだけれど。
生憎なことに、こっちはもう三人とも限界近くまで消耗してしまっている。
そんな状態の僕たちが残ったところで、むしろ足手まといになってしまうだろう。
ここはクラインの言う通り、大人しく街に戻るのが最善の選択だ。
「じゃあ、僕たちはこれで。手伝えなくてごめん」
「いいっていいって。次からはあんま無茶するんじゃねぇぞ!」
「……うん。ありがとう、クライン!」
「クラインくん、またねー!」
「ま、生きて戻ってきたら特別に俺様が武器を作ってやってもいいぜ。そんじゃな!」
最後にもう一度。今度は余計なことは考えずに、心からの感謝を伝えて。
僕たち三人は、街へと戻るために転移結晶を掲げた。
────────────
こうして。
僕たち三人は、無事にラムダの裏通り───リリアが露店を構えていた路地裏へと戻ってくることができた。
大変な思いをしたせいか、まだ数時間しか経っていないというのにこの治安の悪い裏通りを妙に懐かしく感じてしまう。
「いつもの場所だ……俺の知ってるラムダだ……!リオ、兄ちゃん生きて帰ってこれたぞ……!」
定位置に到着するなり、リリアは誰かの(恐らくは妹さんだろう)名前を呼びながら涙ぐんでいる。
「りっちゃん、よかったね〜」
「……ほんと、一時はどうなるかと思ったよ。クラインたちには感謝しないとね」
そんなリリアの姿を眺めながら、思い思いに一息つく僕たち。
何だかんだで、最近の中では一番のピンチだったかもしれない。
おまけに相手はゾンビだらけで……うっ、だめだ、思い出すのはよそう。肉料理が食べられなくなる……!
「……と、ところでリリア、武器のことなんだけど───」
「俺、頑張った…頑張ったよ……!」
「………」
あの光景を心の奥底へと無理矢理封じ込め、何とか本題に入ろうとしたものの。
どうも、リリアの様子がおかしい。
「なぁ、俺頑張ったよな、なぁ……?オマエもそう思うだろ?」
ひょっとして、スイッチ入っちゃった感じですかね……?
「りっちゃーん?呼んでるよー?」
「この調子で、きっと……いや、絶対生きてオマエのところに帰るからな……!待ってろよ、リオ……!」
あ、これはだめだ。
完全に自分の世界に入っちゃってる感じだ。
きっと僕たちの言葉は耳に入っていないに違いない。
「……。仕方ない、一度出直そうか。当分戻りそうもないし」
「そうだねー」
「リオ……!リオぉぉぉ……!お兄ちゃんこれからも頑張るからな……!」
「……
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